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特別取材

機能的な物流・観光拠点を目指す~博多港振興協会(4)
特別取材
2011年5月 9日 07:00

(社)博多港振興協会 会長 角川 敏行 氏

 博多港に関わりを持つ運輸会社、船舶会社、商社などで構成される(社)博多港振興協会。アジアに開かれた港湾機能が求められるなか、博多港運㈱代表取締役会長で同協会会長でもある角川敏行氏に、これからの博多港のあり方について課題と展望を聞いた。

(聞き手、文・構成:I・B編集長 大根田 康介)

<環境に配慮した港>

 ―そうすると、アジアのインフラが整備されればされるほど、博多港の優位性が上がってくるわけですね。

(社)博多港振興協会 会長 角川 敏行 氏 角川 そうですね。国境がどんどんなくなる、いわゆるシームレスの時代になるなかで、今でも日本のトラックが、精密機械に対する振動を防ぐために積み替えをせず、そのまま韓国や中国の工場に運ぶことも実際にあるわけです。逆に言えば、韓国のトラックがそのまま日本国内の工場に貨物を運ぶということも、将来的には十分あり得るわけです。
 そのためにはやはり、よりアクセスしやすいインフラ整備が必要です。実は、新潟港からシベリア鉄道経由でヨーロッパに貨物を運ぶことも以前はなされていたのですが、カーゴトレース、つまりロシア国内での貨物の行方を追うことが技術的に難しく、定時サービスに問題がありました。しかし、現在はIT技術の発達によってカーゴトレースが緻密にできるようになってきました。
 鉄道と海運をコンバインできれば環境にも良いですし、コスト的にもかなり抑えられる可能性があります。

 ―環境と言えば、博多港ではエコターミナルという取り組みがなされています。

 角川 全面的に電動化しているターミナルというのは、世界でもここだけではないでしょうか。「CO2削減」というのは大きなセールスポイントです。グローバルな展開のなかで、博多港のエコターミナルでCO2削減に貢献したということになれば、その企業自体の価値も高まりますから。

 ―地下鉄がウォーターフロントラインからキャナルシティ経由に変更されましたが、それについてはいかがですか。

 角川 もちろん、地下鉄が港まで伸びることになっていれば、利便性はかなり向上したと思います。博多港から博多駅に向かうバスはあっても、福岡空港に向かうバスはありません。都心からここまで3㎞くらいですから、ほかの都市に比べれば距離的に圧倒的に近く、コストもそれほどかからないはずですが、なかなか難しいようですね。港では多くの職員が働いていますが、交通機関が便利になってきたとは言え、やはりマイカーは必須です。
 アイランドシティにしても、約4,000人が住まう島になりましたが、生活環境は良いとしても交通が不便なのはマイナスポイントです。今のところアプローチの手段としては橋が3本しか架かっていません。
 福岡市の方で橋の拡幅工事は進めていただいております。ただ、2016年に青果市場ができるということで、実現すればおそらく小型の貨物自動車が頻繁に往来するようになるでしょう。となると、現在の橋では心もとない気がします。その意味で、鉄道が1本通るのも大切ですが、まずは橋が必要でしょうね。
 今の青果市場でも数千台出入りしており、高速道路を入れるという計画もありますが、まずはそうした道路網の整備をアイランドシティでは急いでいただきたいです。

 ―最後に、今後の展望についてお聞かせください。

 角川 今まで博多港はどちらかと言うとインバウンドによって発展してきましたが、これから求められるのはアウトバウンドの力です。そのためには、観光・物流の2本柱を中心にもっと機能的な利便性を追求するのが我々の役目だと考えています。そのなかで、市民に親しまれるような港を目指していきたいと思います。

(了)

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<プロフィール>
角川 敏行角川 敏行(かくかわ としゆき)
1935年広島県生まれ。58年山口大学を卒業後、木下産商㈱に入社。65年三井物産㈱に移籍し、九州支社運輸部長などを経て、91年に 博多港運(株)代表取締役社長に就任。05年代表取締役会長に就任し、現在に至る。98年、(社)博多港振興協会副会長に就任し、03年より会長を務める。


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