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世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(7)
未来トレンド分析シリーズ
2011年5月 9日 07:00
参議院議員 浜田和幸

食用油 醤油や食用油など、DNAやタンパク質の検出しにくいものについても、EUでは表示することが義務づけられている。しかし日本の場合には、トレーサビリティー法(米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律)が導入されていないことから、醤油や食用油に関しても遺伝子組換え作物由来の原料であるかどうか確認できないとし、表示の義務は課せられていない。

 また、混入の許容率に関しては、EUでは0.9%以上の混入が確認されれば遺伝子組換え原料使用と明示しなければならない。しかし、日本の場合は5%までの混入を容認しているため、5%未満であれば、「この商品は遺伝子組換えではありません」と表示することが許されているのである。

 ことほど左様に、ヨーロッパと日本では遺伝子組換え作物や原材料に関する危機意識や情報開示のあり方に大きな違いが見られる。さらに言えば、外食産業における表示や情報提供の義務にも大差がある。EUでは、レストランや病院、あるいは学校給食など、あらゆる外食産業において遺伝子組換え作物が使われている場合には、その表示の義務が課せられている。他方、日本では外食産業においてはまったく表示や情報提供の義務がないのである。

 もちろん、家畜用の飼料や乳製品をはじめとする畜産品についても、ヨーロッパでは表示義務があるのに対し、我が国ではまったくそのような表示義務がないときている。これほど食の安全について問題が多発していながら、日本人は未だに安全はただで手に入ると思い込んでいるようだ。

 こうした状況のもとで、なし崩し的に遺伝子組換え作物が日本でも一般的に普及することには断固、反対せざるを得ない。とはいえ、すでに食糧の自給率がカロリーベースで40%近くまで落ち込んでいる日本は、遺伝子組換え食品に関しては世界最大の輸入国となっている。豆腐、醤油、油、スナック菓子、大豆タンパク、コーンスターチなど、日常的にわれわれの食生活に入り込んでいることは間違いない。また、家畜用の飼料に関しては、わが国はほぼ100%を輸入に頼っている。

 となれば、牛、豚、鶏など国産の食肉そのものも遺伝子組換え食品と言わざるを得ない。いくら遺伝子組換え作物や食品を食べないようにしようと思っても、現在の日本の食糧事情では不可能ということになる。国内の食糧自給体制を構築するしか、遺伝子組換え作物や食品のリスクから逃れる方法はないといえよう。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。


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