地雷は今なお、カンボジアのとくに農村部に残存している。その数は400万個とも500万個とも言われている(正確な数はわからない)。1960年代から約40年続いた、ベトナム戦争やカンボジア内紛(クメール・ルージュ、政府軍など4派)といった一連の戦争・内紛による負の遺産だ。地雷のことを知れば知るほど、その残虐性・無差別性・残存性がどれほどの肉体的・精神的な傷を現地の人々に残してきたか、大谷氏は痛感した。しかし、今の自分には何もできない。「無力だ」―この体験が大谷氏を地雷撤去支援活動に駆り立てることになった。
とは言え、1人の力では限界がある。そこで、経営者としての経験を生かして支援活動を行なう組織「カンボジア地雷撤去キャンペーン」をつくることにした。1998年5月のことである。参加者は皆ボランティア。各地で支援活動の必要性を訴えても、「遠い国のこと」として理解しようとしない大人も多かった。
しかし、地道な活動のおかげで着実に支援の輪は広がっていった。とくに、大谷氏の話を聞いた子どもたちが親に支援の必要性を訴えるという動きが出てきた。その子どもたちがCMCの募金活動に参加し、現地へのスタディツアーに参加し、現地の現状を伝えていく。これが、14年間も多くの人々に支えられて活動してくることができた大きな原動力となった。
大谷氏自身は「道を極めた」とは慢心していない。「地雷はまだたくさん残っている。今も身近なところで10名以上が地雷の爆発で亡くなるなど、痛ましい被害が絶えない。これをすべて取り除くまでは活動の手を緩めない」と心に決めている。
作家の筒井康隆氏も著書『アホの壁』(新潮社刊)のなかで、「なぜ何度も死にかけているのに、再び死にに行くようなことをしているのか」と「アホの壁」を飛び越えた1人として紹介しているが、先ほど述べたように、大谷氏は大病を患ったことはないけれども、過去幾度となくケガによって生死をさまよった。「自分の体調はいつまで持つだろうか」という不安は常に抱いている。一方で、CMCは大谷氏の力に依るところが大きい。「この組織を自分の代で終わらせたくない」と考え抜いた結果、今回の財団法人化という結論に至った。
大谷氏の地雷撤去への飽くなき追求心は、たしかに周囲の人間に大きく影響を与えている。弊社でも大谷氏を真の人物と認め、ささやかながら中学校建設に協力させていただいた。誰が何と言おうと、大谷氏は「地雷撤去の道を極めた男」として後世に名を残すであろう。
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<開催日時>
5月29日(日) 式典12:00~ (受付11:30)
<場 所>
福岡ガーデンパレスホテル(福岡市中央区天神4丁目8-15)
※式典終了後、同会場にて法人化記念および大谷代表の著書出版記念祝賀会を催します。(参加費:10,000円)
尚、参加費の一部は寄付として地雷被害者支援に使用させて頂きます。
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