上海視察で訪れた小売店すべてに言えることであるが、日本製の牛乳、粉ミルクが置いてなかった。東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故の影響か、日本製の乳製品は店頭からなくなり、中国製品が多数を占めていた。「われわれは飲んでも大丈夫なのでしょうが、3歳以下の子供や赤ちゃんには日本製の牛乳や粉ミルクは飲ませたくないですね」と、かつては日本製品を愛用していた上海市民も敬遠している。不便な思いもしているものの「昔は日本の友達に粉ミルクを送ってもらうほどでした。でも、今は母乳で育てるか、中国のメーカーの粉ミルクを使わざるをえません。放射能の影響はよくわかりませんが、日本製は子供には飲ませないほうが良いかと思います」という。
中国で今から3年前の2008年、牛乳にメラミンが混入し、多くの乳幼児が腎結石にかかるなどの事件が発生したことは記憶に新しい。それゆえに今回の震災の影響で、安心して飲ませることのできた日本の粉ミルクに不信感が生じた結果、苦渋の決断をしているようである。前述のメラミン騒動の際、中国メーカーの乳製品からもメラミンが検出された。その記憶があるだけに、乳幼児を抱える母親の悩みは尽きない。
【矢野 寛之】
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