<海外事業は救世主となるか(8)~命運をかけた中国進出>
今年4月、中国・審陽でプレハブ業界初の日本式の次世代、高性能工業化住宅の生産工場を建設する起工式が行なわれた。いよいよ本格参入となった。根拠はわからないが2014年までで2,000億円の売上を目論んでいる。
おりしも今、中国は不動産バブルの様相を呈している。当局は不動産投資には厳しい規制を行ない、中国人民銀行は窓口指導を強め、不動産融資には抑制の努力を続けている。このように、金融引き締め策を継続し、バブル経済の軟着陸を目指している。日本では80年代のバブルの崩壊後、20年たっても後遺症に悩んでいるのが実情である。
世界中が中国の経済の先行きについて固唾を飲んで見守っている。もし、バブルを制御できなかったら、リーマンショック以上の大打撃が世界を襲うだろうと思われている。
中国では消費者物価指数がこの数年、年率5%以上高騰し、食糧品の値上がりが激しい。とくに地方がひどく、各地方都市で暴動が発生している模様である。当局の報道規制が強く、詳細は不明。さらに金融規制の継続により、経済は低迷し、その上物価の値上がりというスタグフレーションに追い込まれるのではないかと心配されている。
そのような背景のなかでの中国への船出、前途は順風満帆ではなさそうである。しかも引き返すことが出来ない。ルビコンの河を渡ったのである。成功することが不可欠で、楽観的計画、大盤振る舞いは禁物である。チャイナリスクを回避するため、現地の担当幹部は綿密な調査の上に事業計画を立て、ぜひ成功して欲しいものだ。その責任は重大である。
和田会長の発案で中国進出が動き出したとしても、計画段階でいろいろな問題点を知りながら、会長案件だからと簡単に反対も出来ない、無理ではないか、と思いつつ会長の思いだからと、反対意見も出せず、事は進んでしまったのではないだろうか。
しかし、反対者は1人も出ず、事は決せられた。成功すれば会長と、執行責任者の副社長の手柄でもある。失敗しても両人の責任は逃れられない。
何が何でも、このタイミングでなければならないという進出の動機が希薄のまま見切り発車をしたと言われないよう、成功に向かって欲しい。
次回は、中国以外の海外事業について述べたい。
【野口 孫子】
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