<海外事業は救世主となるか(4)~中国進出・合弁会社のリスク>
今回、積水ハウスは中国での合弁会社の資本比率を、積水ハウス97.85%、中国側2.15%としている。中国はWTO加盟後、「独資」といって、外国企業による資本100%の出資も認めるようになっている。独資であれば自社資本だけだから、中国側の意向を聞かなくてもよく、自由裁量で経営ができる。
しかし、積水ハウスは「合弁」を選択したのである。誘致した中国側の意向が働いたのかもしれない。
「合弁(合資)」とは、共同で出資し事業を経営することである。日本も自由主義先進国も同様だが、互いに資本を出し合い、資本金比率に基づいてお互いの責任を分担するというのが通常である。
中国では合弁にした場合、出資比率に関係なく、たとえ、日本側が97%出資したとしても、事実上の主導権は3%の中国側にあると言っても過言ではない。従業員の人事権、財務、商品、材料の管理など、主要なところは握られてしまう。
今回、「薫事長」は積水ハウス側が座ることになっているが、それは表面上の職位であり、日本人の権力が現場まで及ぶと思ったら大きな間違いであろう。
実際は、中国人の陰の実力者が現地社員をコントロールしている。何か従業員との問題があって中国側と意見が対立し、それを放置していると大きな問題になることがある。中国人は見えないところで統制されている、と理解すべきだろう。
事業を開始後に不都合なことが山積して撤退を考えても、合弁相手の同意がいる。その場合、たいてい中国側は"ノー"のため、契約経営期間の残期間の利益保障に加え、機械設備などを5年間は移動できないため、それを置いたまま出国しなければならなくなる。
また、日本人が97%出資していようが、「日本人が主導権を持つことなど、しょせん無理である」合弁の場合、日本人管理職と同格の中国人に対し、同額の給料を払わねばならない。たとえば、副薫事長なら日本人の薫事長と同等の給料――年1,000万円なら1,000万円を要求される。同じように、日本人の部長が800万円なら、実力と関係なく中国人の部長にも800万円を要求される。
そのため、人件費の高騰は避けられず、コスト競争力も落ちてくる。
【野口 孫子】
※積水ハウスへの誹謗中傷するものではありません。
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