<海外事業は救世主となるか(7)~中国進出・ルビコンの河を渡る>
中国は今、不動産バブルとも言われている。各都市で大型の都市開発が行なわれているが、住人の気配がしないマンション群がテレビで放映されていた。これを「鬼城」と呼ばれているらしい。人が住まずに鬼が住んでいるということらしい。自分たちの居住用でなく、値上がりを期待した投資用に購入されているのである。今や、バブルの真っただなかにあるように思える。日本も1980年代の不動産バブルが、やがて崩壊に向かった苦い経験を持っている。
しかも中国は、外資に対する税制優遇措置の縮小、労働契約法(終身雇用を義務付け、違反企業には賠償)の設立など、外資に対するビジネス環境は悪化に向かっている。労賃の上昇、人民元の上昇基調、年率5%以上の食糧、資源の高騰、もはや、中国には魅力はないのではないだろうか。
この中国経済の状況下で、外資は離脱の動きを見せ始めている。積水ハウスはその流れに逆らうように、中国進出を決意したのである。よほどの成算があるという経営判断なのだろう。縷々(るる)説明したように、中国進出とは、一度渡ったら、二度と引き返すことのできない「ルビコンの河を渡った」ということなのである。何としても成功しなければならない。投下資金を回収するため、中国で成功するまで事業を継続することが不可欠である。
積水ハウスがオンリーワンの技術を駆使し、中国市場で大きな評価をもらえれば、成功の可能性はある。しかしノウハウ、技術の流出を招いたり、数々のチャイナリスクで不採算事業を抱え込んだりする恐れもある。日本で商品競争力があり、オンリーワンの技術を持つ企業なら、あえて、中国に進出する必然性もないだろう。
投資額、売上高、製造コスト、建築コスト、一般管理費などの予想される数字の根拠、法務、会計、税務などの諸制度、各種リスクの所在、そのリスクによって、どのように損益が変動する可能性があるのか、綿密な分析が必要だろう。経営者、会長、副社長の「堪」で投資判断がなされたとは思わないが、もしそうであれば、将来、大きな禍根を残すだろう。そのようなことのないことを祈る。
【野口 孫子】
(参考)
「ルビコン川」 イタリア北部を流れる川。ローマ時代、ローマと辺境の境界線に流れており、辺境軍がこの川を渡ることは許されなかった。渡れば、二度とふたたび自国には帰れなかった。
※積水ハウスへの誹謗中傷するものではありません。
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