アイランドシティは、死地になるかどうかの瀬戸際と言っても過言ではない。見て見なかったふりでは、どうしようもないことは明白だ。ではどうするか。活かすも殺すも今の選択にかかっている。この意識を持つことから始めなくてはいけないのではなかろうか。
パラマウント、UCLA。両者を誘致するという途方もない計画が実現できるか否か。そのために最低限必要なものは胆力に他ならない。計画するもの、実行するもの、その双方にやりきろうという心の力があれば、実現は不可能ではない。ただ、それが一番難しい問題であることもたしかだ。人の心は移ろいやすく、冷めやすく、風に流されやすい。そのなかで矜持を保ち続けるのは並大抵ではなかろう。
とくに、実施に関わってくる行政サイドでは、市民から集めた税金を投入する必要も出てくる。反対の声も上がるだろうし、批判も数多く出てくるだろう。そのなかでも心を強く持ち続けることは容易ではない。だからこそ、ヘソの下にグッと力をこめて、取り組んでいただきたいのだ。
誘致できる計画と素地は既報のとおり整っている。現段階で必要なもの、それは行政区の長たる市長の決断である。何を決断してほしいかというと、誘致そのものではなく、アイランドシティの行方を考えることだ。これまでさんざんパラマウントを!UCLAを!と述べてきたが、これはあくまでも一案にすぎない。壮大な計画には多大な出費も必要になる。資金繰りへの知恵巡りも必要になるだろう。そこまでは今決めなくてよい。アイデアのひとつとして、いまだにパラマウントの計画が生きているという事実を認識し、それを議論の台に載せていただきたい。別案でよりよいものが生まれたならば、それを取り入れればよい。一括して実行することが無理ならば、部分的に取り入れてもよいと思う。そういう具体的な結論を出して、次のステップに進んでいただきたいだけなのである。
「このままではアイランドシティは死に地になる」
この言葉は先出の博多港開発元社長が述べたものだ。彼は本気で福岡市の将来を憂いていた。そして現実的に予測される暗い未来を打開する可能性としてパラマウント映画のテーマパークという計画を立ち上げたのだ。彼はアイランドシティに広がる暗雲が、やがて福岡市全体に大雨を降らせ雷を鳴らすことが分かっていたのだろう。
そして今、その頃の心配が現実のものとなりつつある。売れない土地の活用に救急絆創膏のような措置ばかりが積み重ねられている。それでは賞味期限の切れた食品に濃いソースを塗りたくるようなもので、事態は何ら改善されない。いつ食中毒を出すか心配し続けなくてはいけないのだ。これは、これまでの経緯でもよく分かっているはずである。どうやったら抜本的に改善されるのか。死に地なるとの予言が現実になりつつあるということは、元社長の先見性は正しかったということになる。とすると、この計画も間違っていないのかも知れない。今はまだ死に地に「なりつつある」段階。死んだ後に蘇生させるよりも生きているうちに措置をとる方がずっと楽なはずである。難しいことではない。まずは計画を俎上に載せることから始めてはどうだろうか。
【柳 茂嘉】
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