中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
中国では毎年6月の初旬に、日本の大学入試センター試験と同様の「高考」といわれる全国一斉試験が行なわれる。今年(2011年)は6月7日から9日の3日間で行なわれた。日本のように前期、後期の区分はなく、3日間の試験での一発勝負。将来のエリートコースを約束された一流大学入学への道は、この3日間の試験で獲得する点数によって決まってしまうのだ。そのため、受験生の親も必死だ。「高考」の試験当日は多くの親が試験会場の門の外で子供の合格を祈りながら見守っている。なにせ、かわいい「ひとりっ子」の天下分け目の大事な日、子供の華々しい将来を願い、門の外で親たちも一緒に戦っているのだ。
こうしたなか、青島市のとなり即墨市で、この「高考」試験に何度も失敗して精神に異常をきたした24歳の女性が、裸のまま汚泥満載のトラックによじ登り泣き叫ぶという事件が発生した。公安当局もこの時期のきびしい現実を理解しているだけに、クレーン車を手配し、この女性を優しく保護したという。
この「高考」試験は、地方によってそれぞれ異なる800字ほどの作文の問題があるという。山東省における今年の作文問題は「この世界はあなたを必要とする」という題材の問題だったらしい。
中国全土、たった3日間で受験生約933万人の順位と人生を決めるこの「高考」試験、その制度そのものに問題点を指摘する声も多いという。試験日翌日の青島早報新聞では、今年の作文問題をもじって、<この「高考」はあなたを必要としているか?>と疑問を投げかけている。
【杉本 尚丈】
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