(有)野口石油 代表取締役社長
福岡県連合協力雇用主会 会長
NPO法人福岡県就労支援事業者機構 理事 野口 義弘 氏
<徐々に広がる就労支援の輪>
―協力雇用主のお話が出ましたが、就労支援の制度にはどのようなかたちがあるのですか。
野口 協力雇用主とは、あらかじめ保護観察所に登録し、仮釈放や保護観察中の人を積極的に雇用して社会復帰を支えるボランティア事業主のことです。現在、全国に約8,000社あり、そのうち約130社が福岡県の事業所です。ここ10年で、全国では約2倍、北九州地区に限れば約4倍に増えてきています。
協力雇用主になる際の資格制限はありませんので、多くの熱意ある事業主に参加していただきたいですね。
―しかし、非行少年を雇用するにはリスクもあります。熱意に頼るだけでは限界があるのでは。
野口 そうなのです。雇用した子どもたちがすべて立ち直ってくれるわけではありませんし、そうなると経営上の事故が起こる可能性も高くなりがちです。もちろん、それにも増して大きな喜びがあるのですが、経営面での経済的支援を求める声があったのはたしかです。
これを受けて、最近では法務省が定めた「トライアル雇用制度」と「身元保証制度」による経営面でのサポートが徐々に充実してきました。「トライアル雇用制度」では、刑務所出所者などを雇用した事業所に対して月4万円の支援金が3カ月間支給されます。また、勤務当初の1年間は「身元保証制度」によって保護観察中の少年らの身元が保証されるので、仕事中の事故で損害を出したような場合、弁済能力のない彼らに代わって同制度から100万円を上限に雇用主に支払われます。
これら制度の存在が浸透すれば、躊躇っている事業主の不安を取り除く助けになるはずです。
―行政や法律家とのネットワークも広がりつつあると聞きます。
野口 10年4月の「NPO法人福岡県就労支援事業者機構」の発足は、とてもうれしい出来事でした。実は、これまで非行少年の更生に取り組んできた警察、保護観察所、保護司、弁護士、雇用事業主といった関係各所の連携は、あまり緊密ではありませんでした。警察と弁護士はそもそも緊張関係にありますし、各々が保有する個人情報の保護などが足かせになっていたからです。今後は就労支援事業者機構のもと、各所が垣根を取り払って活動できるのではと期待しています。
弁護士さんへの印象も大きく変わりました。先日、福岡県弁護士会所属の若手20名らと共に青森で行なわれた報告会に行きましたが、そこには全国から250名もの弁護士が集まっていたのです。知名健太郎定信弁護士や本田健弁護士らが中心となった「非行少年更生支援ネットワーク」の取り組みが全国的に注目されているのがわかりましたし、これまで縁遠い印象であった弁護士さんが、身近で心強い存在になってくれたことに驚いています。
【文・構成:田口 芳州】
COMPANY INFORMATION
(有)野口石油
所在地:北九州市戸畑区初音町6-30
設 立:1995年5月
資本金:300万円
野口石油HP「野口さんちの油屋さん」
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