実際のサービスとは誰がどう考えても見合わない法外な値段で客から大金をせしめる、ぼったくり。10年ぐらい前までは、飲み屋に行ってひとり100万円ということも珍しくなかった。新宿・歌舞伎町では、被害にあった客が店と人間とケンカになって殺されて、黒ゴミ袋に入れられて街のゴミ捨て場に捨てられていたという事件もあった。ぼったくり全盛期のことである。それから各繁華街で「清浄化作戦」という官民一体のキャンペーンが行なわれ、今ではあまり派手な話を聞かなくなったのだが―。
繁華街あるところ、ぼったくりは必ずある。しかしながら、今では客からぶん取る価格の設定を少し下げているようだ。あるスナックで隣に座った会社員風の男性(A氏)が、「この間、ぼったくりにあった」という話を始めた。聞いてみると、3人で客引き(違法)にすすめられた店に行ったところ、合計で8万円とられたという。
3人で8万円とは、高級クラブなら然もありなんという値段だが、問題はその店が表向きは激安をウリにした店であったことにある。支払い時、さすがに疑問に思ったA氏が、その内訳を聞くと、なんと女の子がガブガブ飲んでいたドリンクが1杯4,000円だったというのである。そして、たまらずA氏が「聞いていない!」と文句を言うと、店員がメニューを指さした。見ると小さく「女の子のドリンクは4,000円」と書いてあったとか―。
話を聞けば、たしかにぼったくりの手口である。小生も若かりし頃、女の子がボリボリ食っていた細い棒状のスナック菓子が「1本1,000円」といわれたことがある、その時はさすがに通貨の単位を確認するしかなく、残念ながら日本銀行券であった。当然、そのほかの店の子が飲食していたものについても法外な値段。請求された金額は、記憶の闇に葬ったので覚えていない。ちなみにカラオケだけは1曲100円という良心価格であった。
しかし、A氏のケースは"払おうと思えば払える料金"である。ちょっと店員が凄めば、一般の人は思わず払ってしまうだろう。というわけで、今はぼったくりも客単価を下げながら、目立たず、コツコツと稼いでいるようだ。中洲歴20年のスナック店長に聞くと、「昔、(ぼったくりを)派手にやっていた経営者は、その甘い蜜が忘れられず、今でも同じことをやっている」とか。みなさん、くれぐれもご用心を!
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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