(有)野口石油 代表取締役社長
福岡県連合協力雇用主会 会長
NPO法人福岡県就労支援事業者機構 理事 野口 義弘 氏
<遅咲きの経営者>
―以降は、企業経営についておうかがいしていきます。独立開業は95年、野口社長が52歳のときですね。経営者としては遅咲きですが、どのような経緯だったのですか。
野口 私は熊本の出身で、北九州に移ってきたのは24歳のときでした。何度か転職の後、9店舗を経営する北九州のGSの会社に就職して社長を長年補佐する立場で働いていたのですが、独立の思いを捨てきれず94年に退社しまして、その6カ月後に現在の1号店となる戸畑店を開業しました。
―当時は石油の輸入自由化などもあり、GSの淘汰が本格化し始めた時期です。
野口 周囲からも「何で今の時期に」と引きとめられました。しかも、戸畑店は新設店ではなく、経営者が4回も代わった不採算店を譲り受けるかたちでしたから、なおさらですよね。実際、開店当初は毎月80万円の赤字を出し、経営は大変でした。そんなとき、やっとの思いで辿り着いたのが洗車サービスを柱にした今の経営形態だったのです。
―失礼ながら、戸畑店の立地は決して良くありません。洗車に力を入れただけで集客が改善するものでしょうか。
野口 ご存知の通り、安値競争の激しいガソリンでは利益は出ません。販売量を増やすほど、リスクだけが高まってしまいます。販売量=集客を追う方針は捨てなければいけないと考え、サービスの向上に舵を切りました。
洗車については、こだわり抜く姿勢がお客さまから支持されたのだと思います。最上級の洗車装置だけでも1,300万円をかけていますし、イオン水や温水、布ブラシなど、考えつく限りのこだわりを追求しました。こだわるごとにお客さまが増えて、だんだん楽しくなってきます。働いている子どもたちも洗車の依頼があるたびに大喜びするようになり、洗車が経営の基盤であるという認識が皆に生まれたことで経営状態は上向いていきました。
―非常に高い洗車率(来客が洗車をする率、一般的には15~20%程度)だそうですね。
野口 洗車機メーカーのビューテー(国内トップシェア)さんから、「洗車率日本一」の称号をいただいたこともあります。現在では3店舗を運営していますが、いずれも不採算スタンドを譲り受けて洗車で立て直した店です。洗車後に使うポリマーにもこだわった末、最終的に自社で開発しました。
日本初の試みだったそうで、「野口さんちの油屋さん Nポリマー」は九州地区を中心に全国400店舗に導入されています。
【文・構成:田口 芳州】
COMPANY INFORMATION
(有)野口石油
所在地:北九州市戸畑区初音町6-30
設 立:1995年5月
資本金:300万円
野口石油HP「野口さんちの油屋さん」
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