伝統工芸品「博多織」の商標をめぐり、2つの組織が裁判で対立している。1つは織元などを中心に構成される博多織工業組合。もう1つは無料着付け教室で成功を収め、「博多帯」を立ち上げたJASDAQ上場企業の日本和装ホールディングス(株)だ。どちらも福岡の地で育まれ、「博多」への熱き想いを抱いているがゆえに衝突してしまった。今回、渦中の博多織工業組合・寺嶋貞夫理事長と日本和装・吉田重久社長の両者に、それぞれの胸中を語ってもらった。
―博多織との出会いは。
吉田 最初からこの商売がうまくいっているわけではなく、博多織が我々を救ってくれました。当時は動脈に大きな注射針を刺して歩いているような状態ですよね。無料でやるわけですから。心臓が止まるのが先か、血が止まるのが先かという状態です。いろいろやりぬいて、ドーンと物が売れだしたきっかけが博多織でした。
まず小さなところから取引を始めて、いろいろなところで頭を下げまくって、博多織工業組合にも後援をお願いしました。そうしたつながりもあって、一気に販路が広がりました。博多織が売れ出したときは、本当にうれしかった―。
しかし、いくら現金決済にしても、業界環境が悪いから倒産もありました。それが後藤にまで及んだ。忘れもしない2009年1月27日、大阪のホテルでパーティーをしており、ちょうど終わったころに社員から「後藤が倒産しました」と聞き、あわてて東京に戻りました。
会社が倒産したと聞いたときは、相手の心配をするわけではありません。真っ先に、払ったものがきちんと納品されているかを調べます。それほど問題なかったということがわかり、2月に福岡へ行きました。後藤の常務に会い、子会社まで潰れるという話を聞きました。あとはご存じ(表)の通りの経緯です。
その後、組合へ行きましたが、後藤がほかの会社に迷惑をかけているわけで「それが片付いていないときに何でそんな話(組合加入について)か!」ということになりました。しかし、それとこれとは別の話じゃないですか。従業員を食べさせないといけませんから。しかし「考え方の問題だ」と先方に言われました。
検査機能が必要ということで、技術者が集まり組合をつくることになりました。それで名前を考えたわけですが、「博多織」というのはもちろん商標ですけど、私は誰でも使えるようにするのが地域ブランドだと思います。「織」と「帯」だったら違うだろうということで、リーガルチェックなどを経て「博多帯」の製造・販売を始めました。
そのあと何回も組合に通ったのですが、最後は技術者まで紹介しないということにまでなって、何か壁をつくっちゃうんですよね。
―それは、価格面の問題などがあるからでは。組合に話を聞いたときはそのようにおっしゃっていました。
吉田 しかし、自分たちで価格を操作するのは独占禁止法にひっかかるんじゃないんですか。「価格は自由」というのが資本主義社会ですから。私は博多織に思い入れがあります。私も福岡出身として負けない愛情を持っているつもりです。
【文・構成:大根田 康介】
COMPANY INFORMATION
日本和装ホールディングス(株)
所在地:東京都千代田区丸の内1-2-1
設 立:1986年7月
資本金:4億5,963万4,444円
売上高:(10/12連結)63億1,055万円
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