2009年の世界の自動車市場で、中国は販売台数、生産台数ともに世界一になった。とくに、中国の自動車販売台数は、年間1,364万台となり、前年比426万台も増えた。この勢いは衰えずに、09年から10年の間でも、442万台増えている。生産台数もすでに日本を抑えて、1,806万台超となった。はっきり言って、異常なまでの伸びを示していると言っていい。
その背景には、これまでの外資の技術導入などで、中国メーカーの供給力を高める一方、政府の景気刺激策を支えに、中間所得層の人たちにより小型車の購入が大きく伸びたことが挙げられる。ただ、不安要素もある。不動産バブル崩壊などによる経済成長の腰折れ、ストライキ問題などに見られる貧富の格差拡大による社会不安、政治抗争、覇権争いなどは今後の不安定要因でもある。
日本のメーカーは現地ニーズの研究を欠かすわけにはいかない。それに、最先端技術の開発は日本国内で行なうにしても、次世代新エネルギー車などの先進技術を中国側に開示することで、中国市場に根付かせる努力を続けることが必要と思われる。中国市場は急拡大したものの、乗用車の平均価格も大幅な下落傾向にある。日系メーカーの車は中国メーカーに比べて、2割から5割ほど高い。今後は現地調達率のアップ、大幅なコストダウンが求められるだろう。日系部品メーカーはこのような市場構造の変化と完成車メーカーの今後の動向に大きく影響を受けるだろうし、対応に迫られるだろう。
まずは、中国の自動車産業の歴史について、ひもといてみる。1956年に、生産を開始した長春の第一汽車は、当時、ソ連の援助を受けて設立された。そして、第一汽車がその後の中国の自動車産業のすべての発展モデルとなった。その後は、中国とソ連の対立などを経て、徐々に自力更生に切り替わっていき、69年には、重要産業である自動車工場を湖北省の山奥に建設。湖北第二汽車(現在の東風汽車)が第一汽車に対抗して、4トントラックを作り始めた。
【杉本 尚丈】
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