東日本大震災から約3カ月。東京電力・福島第一原発の事故の影響で激減していた日本への 中国人観光客は、5月の温家宝首相の訪日を境に、現在は回復傾向にある。しかし、日本経済は中国からの観光客だけで潤っているのではない。数十年前から日本企業は現地企業と合弁会社を設立し、約13億人の巨大市場を虎視眈々とねらって いる。
福岡を代表するファミリーレストラン「ロイヤルホスト」も中国へ進出。昨年(2010年)11月に上海市中心部の「美羅城(メトロシティ)」に1号店をオープンした。4日、弊社取材班が同店を訪れたところ、東日本大震災の影響があったという。
「(震災直後)たしかにお客様は減少しました。当店はカレーやソースなどの調味料は日本から輸入しています。ただし、『鶏肉は同店のものを使用していますか?』と問い合わせされたお客様には『青島産です』と、説明しています」(同店関係者)。
現在のところ、震災直後の有無を言わさず客が減るような事態は鎮静化し、産地の説明などを求められることはあるものの客足は回復傾向にあるようだ。
しかしながら、依然として日本食および日本資本レストランは影響を受けている。現地ガイドによると、「日本食レストランは『日本食と安全』を強調する店舗が多かったのですが、(震災直後はほとんどが)『日式』という言葉を使っています」という。実際に、街のいたる所で「日式」という表示を目にした。震災後「日本」と「食」の組み合わせは悪い印象を抱かせるようである。
今まで「日本食」を代名詞に、安心・安全をアピールする営業をしていたものの、震災をきっかけにコロリと表現を変える。そこに中国人の商いにおけるしたたかさ、タフさを感じる。また、裏を返せば、そうした中国人経営者に「日本食」へのこだわりはないということだろう。
【矢野 寛之】
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