ロイヤルホスト中国1号店は、昨年(2010年)11月に商業施設「美羅城(Metro city)」内にオープンした。約100坪の店舗に135席を配してある。間仕切りの多いレイアウトの印象は少し異なるが、ユニフォームは日本とまったく同じ。ただし、サービスには多少不満があった。料理が届くまで時間がかかることや従業員間の私語は目立つことだ。料理のボリュームは多い印象も受けたが、それで相殺と訳にもいかない。
ところが、全員が異なるオーダーをした5名に何も聞かずに註文通りの料理が配されたことに気がついた。注文はハンディ(注文端末)でなく手書き伝票。持ってきたのはそれぞれ違う従業員だ。聞けば最初にオーダーを取った20代女性従業員が注文のことごとくを記憶し配膳者に指示を出したのだという。しかもそういう教育を受けたわけではない。思えばその女性従業員は読んでいるメニューに触れただけで丁寧に謝罪をしていた。この件について地場飲食店の経営者は「かなりすごいこと」と驚きを隠さない。その他大勢との差は大きいが、その従業員に限っては尋常でない心配りと言えるだろう。
地場スーパーチェーンのレジ担当者からは「いらっしゃいませ」といった丁寧なあいさつはない。金額表示が見にくく必死に覗き込もうとしても一瞥(いつべつ)するのみ。むしろぞんざいな印象だ。接客は他の外資系スーパーや百貨店も含めて接客には積極的だが買わないとわかると潮が引いたようになった。メーカー派遣と見られる試食担当者はより露骨な印象を受けた。ところが、茶系飲料の試食コーナーの若い女性担当者は買わないことを申し伝えたてもにこやかに提供して即座に空きカップを受け取る。こちらが拍子抜けするほどに勧誘がない。
スーパーの出口で若い男性が配るチラシを受け取ると中国語でまくしたててついてきた。「しまった」と思ったが、こちらが日本人ツアー客と解った瞬間に「have a nice trip」と、ほほ笑んで持ち場に帰って行った。同スーパーは観光地から遠く来店客のほとんどは地域住民だ。
先の飲食店経営者は、ロイヤルホスト従業員のサービスについて「お客様が求めているかは別」とも付け加えた。たしかに、注文については見過ごした可能性もあった。やはりより早く配られ、私語がないほうが印象ははるかに良かったかもしれない。
それでもこれまでの視察では感じることができなかった幅広い業種での高いサービス意識に触れることになった。
【鹿島 譲二】
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