<たくさんの励ましの声に感謝>
―ブルーインパルスは松島基地周辺地域の皆さんに親しまれていると伺っていますが、震災後は地域の皆さんに対して何か特別な活動をされましたか。
渡部 災害派遣活動の一環としてパイロットが小学校や幼稚園を訪問して、子供たちと汗だくになるまで遊びました。子供たちは本当に元気ですね。子供たちだけでなく先生方からも大歓迎を受けて、われわれのほうが逆に元気を分けていただきました。
また、被災地だけではなく全国の様々な方々から心配する声や励ましの声をたくさんいただき、心から感謝しております。
<日本が元気になれるような展示飛行を>
―約2カ月半ぶりの飛行訓練にはどのような思いがありますか。
渡部 今回3月11日以来、初めて曲技飛行の訓練をすることができました。しかし、松島基地やその周辺はまだまだ復興には程遠い状況の地域がたくさんあります。たしかに震災直後と比べると、だいぶ復旧が進みましたし、余震も少なくなりました。全国から増援部隊が来て周辺地域への災害派遣を引き受けてくれているので、松島基地の隊員は基地の復旧活動に専念できています。そのように態勢が整ったからこそ、われわれは芦屋基地で飛行訓練をすることができています。しかし、まだ災害派遣命令が出ており、芦屋基地からも隊員が増援部隊として松島基地に派遣されているなかで「本当に訓練を再開して良いのか?」という思いはブルーインパルスの隊員全体に強くあります。
しかし、被災者の方々そして多くのご声援に応えるためにも、我々ができることは「日本が元気になれるような展示飛行」をいつでもお見せできるよう準備することだと思っています。われわれブルーインパルスは航空自衛隊のみならず被災者そして国民の皆様に「夢と希望」を感じ取っていただくことが任務だと考えていますので、そのためにも、できる限り技量の回復・維持に努めてまいります。パイロットも整備も常に飛行機に触れていなければ技量は低下しますので、この訓練を行なえてとてもありがたいです。
<感謝と絆を胸に>
―今後の展示飛行の予定をお教えください。
渡部 現段階において今シーズンのブルーインパルスの活動は未定です。しかし、飛べといわれたときに安全かつ最高のパフォーマンスで飛行できるよう、今回の訓練では技量回復・維持のため毎回の訓練を大事に実施しています。全国のたくさんの方々からの応援をいただき、自衛隊員も一致団結して、日本全体が強い絆でつながっていることを感じ、感謝の気持ちでいっぱいです。いつの日か被災地そして全国の皆様に「日本が元気になれるような夢と希望の展示飛行」をお届けできればと願っております。
―日本を元気にする夢と希望の展示飛行を楽しみにしています。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
渡部 「感謝と絆」を胸に頑張ります。今後とも応援をよろしくお願いします。ありがとうございました。
【文・構成:吉澤 英朗】
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<プロフィール>
渡部 琢也(わたなべ たくや)2等空佐
1967年東京都生まれ(44)。千葉東高等学校を経て、91年防衛大学校(管理学専攻)(神奈川県横須賀市)を卒業し航空自衛隊に入隊。F-15J戦闘機パイロットとなり第8航空団第304飛行隊(福岡県築上町)、指揮幕僚課程(東京都目黒区)、第2航空団第201飛行隊(北海道千歳市)、航空幕僚幹部防衛部防衛課(東京都新宿区)などを経て09年に第4航空団第11飛行隊「ブルーインパルス」(宮城県東松島市)に着任し10年より同隊隊長。
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