【第5話 創業者の功罪(前)】
―― 山水建設の幹部クラスは、現会長に自分の意に沿わないことでも従順に聞いている。毎日『ヘコヘコ』して相当なストレスでしょう。人間ですから、どこかでバランスをとらなければなりません。現会長に虐げられている幹部クラスは、そのはけ口を部下に持っていっているのですか。
野口 そうですね。幹部クラスは部下に対して、かなり無茶な命令を下しておりますね。言われるままに。だから現場ではお互いギクシャクしてきているのです。だから業界第2位となっているのです。以前は1位でした。その1位とも差が開く一方です。
―― 山水建設の経営者も悪いですが、社員・スタッフは情けないですね。勇気を出して立ち上がれと言いたいのですが。
野口 その通りで、従業員に立ち上がれと言っても立ち上がれきれないのが現況です。業界トップの座を譲っても、取り返そうという覇気がない。
―― 創業者・山田氏の人を大切にする経営哲学を知る『野武士』たちは、正論を述べ皆外され辞めてしまっているのでしょう。
野口 その通りでして、今は創業者の心を知っている人間は、役員にも登用されず路線から外れ、ほとんどいなくなっています。
―― 正論を述べる人間を外して辞めさせるには、現会長に迎合する幹部が数多く存在するということですね。DKホールディングスはどうでしたか。
石川 オーナーであった黒田は、「モノを聞く=人の話を聞く」というスタンスです。本質的に公正であるがそうでないかですね。黒田は、公正であったのです。こと社内の管理という観点から申し上げるならば経営者は、その資質があるかどうかではないでしょうか。
―― ゼロから会社を創った人間は「こうしたらマズイ、大変なことになる」と判断し分かるのです。山水建設のような経営者は、策略を講じるとそれに転がってくることで自らを守るのですね。
野口 山水建設の創業者は、不動産など投機的な話には一切手を出さなかったですね。本業一本で。「投機的なビジネスは何れ滅びる」と日頃から言っておりました。だから山水建設の世間のイメージは、すごく良いのです。今でも会社のイメージは、クリーンなイメージを保っています。
石川 たとえば技術に立脚している、キチンとした販売網を形成しているなど大きな特色を持っておれば、売上や利益ばかりに走らず企業経営が実現できると思います。そのようななかでハウスメーカーは、自由競争で競合が激しい業界であり最大手でもでもシェア1%と。おのずとどの会社も、営業の尻を叩いて歩合給でもってマネジメントして、業績を上げていくことにほかならないと思われます。
野口 基本は顧客第一であります。業界で直販を実施したのは山水建設が、わが国では初めてです。施主に対して「建てた家のことは、チキンと最後まで責任を持ちます」という姿勢です。地元の販売店に任せるのでなく、自社で実施することで信頼を築いたのです。その後どこもやり始めました。
石川 過去業界1位であったとき、2位以下の同業他社から追撃を受けますね。そのような時はどのような手段を講じていましたか。
野口 付加的に不動産業にも進出しておりましたが、当時はまだ人口増加の時期で住宅の建設が発生しておりました。営業努力により本業主体という姿勢を崩すことなく、経営してきたことが良かったと思います。基本的に本業以外の事業に手を出すなという考えでした。
【文・構成:河原 道明】
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