【第6話 企業理念】
――さて、石川さんが社会人になって最初に入られた流通最大手企業は、山水建設と比較してみて、どのような感じでしたか。
石川 アドバルーンの上げ方は、山水建設と似ておりましたね。私が居た流通小売業は、ハウスメーカーと異なり"頭を下げない"商売です。つまり店舗を出して、お客様が希望する商品が並んでいれば勝てるし、それが出来ていなければ負けるということです。商品の仕入れであり、店舗の立地によるところが大きな要因でした。
――2兆円規模の流通最大手企業もオーナーの独裁によってマネジメントされていたのではないですか。官僚的な幹部や提灯持ちの幹部がたくさん存在したのでは。
石川 そうですね。永年オーナー主導での経営でしたので、たしかに実務レベルの詰めが甘い組織になっておりました。現在の山水建設のように、トップに対してモノ申す人間は、ほとんど存在しなかったのです。先程、野口さんが述べられているように、サラリーマンだからモノ申すことなく、黙って従って居るほうが楽だからです。しかし、その結果、店舗出店の立地選定や品揃えを誤ってしまうことで、収益力が劣化してしまったのです。
――そのような話を伺うと、250~260億円規模のDKホールディングスの黒田氏は、悲哀でしたね。組織を作り上げたのか、作り上げ切れなかったのか。企業理念は確立されていたのですが。
石川 そうですね。企業理念は明確でした。オーナーの利益第一主義。これはぶれていないですね。
【文・構成:河原 道明】
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