【第7話 創業者の功罪(後)】
――DKホールディングスの黒田氏は、破綻した後2年間は顧客であったオーナーへ営業しないという約束で会社を整理しました。そして2年が経過して、黒田氏が新たに立ち上げた不動産会社へは旧オーナー側から是非管理して欲しいというオファーをもらっています。この件だけを見ても、いかに黒田氏が顧客であるオーナーを大切にし、信頼関係を構築していたのかが分かります。新会社を立ち上げ、スタートさせておりますが、這い上がるというより水面下に出てきている状況までになっております。山水建設の社長に置き換えると、同じ局面に立たされて同じように復活できるでしょうか。
石川 オーナー経営者は、自ら切り開くことしかないのです。山水建設のように、雇われサラリーマン社長が同じ状況になっても、引退するかどこかに雇われるかではないでしょうか。
野口 這い上がるような者は、居ないでしょう。引退はしても他者に雇われることもないでしょう。オーナーは己の力で切り開き発展させていきますが、山水のように雇われ社長はあくまでも"山水"というブランドがあっての社長であるから、本質的な経営能力は無いのです。「自分には力があると」幻想を抱いてしまうのです。
――これは、DKホールディングスの社員らにも言えたことで、上場し業績が急伸したことで、突出した力を持っていなくとも「私は力があるのだ。他の企業の誰よりも高い給与を貰って偉いのだ」と勘違いしてしまったのではないでしょうか。黒田氏は、顧客(オーナー)も社員もとても大切にしたので、手厚い利益配分を実施したことが、かえって勘違いさせてしまったのです。破綻後、退職し再就職活動中の元社員らに、提示された給与の条件は年間200万円台です。DK時代には600万円貰っていた人間が・・・。
石川 たしかに利益配分という面では、手厚かったというやさし過ぎたでしょうね。
――そして通常なら民事再生法を申請したら経営者個人も保証を求められ追い込まれますが、黒田氏においては上場していたことで、それらは回避できました。黒田氏本人の強い志もありますが、それらも早く再起できた要因でありましょう。
石川 現在、どこの会社も事業継承は大きな課題であると言えましょう。それは、後継者が個人保証にしり込みする実態があるからです。したがって今は、上場自体へのメリットが感じられず上場する企業が少ないですが、今後、再び必要となってくるのではないでしょうか。
野口 新興企業の上場は、基準が甘かったですね。よって様々な問題が生じてきているのです。株主や世間に表明している情報が、真っ赤な嘘であるなど犯罪まがいの事象も存在致します。上場への規制が一段と厳しくなってくるでしょう。
石川 野口さんがおっしゃる通り、上場企業の不祥事が出る度に規制が厳しくなってきます。真面目に経営活動している企業にとっては、たいへん迷惑な話ですが。
【文・構成:河原 道明】
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