6月15日は「上海協力機構(中国名:上海合作組織)」が発足して、ちょうど10年目にあたる。これは中国、ロシアと中央アジア(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)を正式メンバーに、モンゴル、インド、アフガニスタン、イラン、パキスタンや東南アジア諸国連合(ASEAN)もオブザーバー、準加盟国となっている注目の「国家連合」である。
当初、設立の目的は「国境警備やテロ対策」と言われていたが、徐々に軍事同盟的な色彩を強め、共同軍事演習を繰り返すようになってきた。2007年には「平和への使命」と名付けた軍事演習を実施。中国から1,600名、ロシアから2,000名もの陸軍兵士が参加した。本年(2011年)5月には、中国の新疆ウイグル自治区で大規模な合同軍事演習を行なったばかり。
また、エネルギー問題についても大消費国である中国が石油・天然ガスの宝庫である中央アジアとの関係を深める場となっている。
実は、事態の成り行きに警戒を強めたアメリカは、05年にオブザーバー加盟の申請を行なったが、たちどころに却下されてしまった。中国を中心とする「反米同盟」として、存在感を高めつつあるといえよう。なにしろ、加盟国と準加盟国で地球上の陸地の4分の1を占め、天然資源も豊富ときている。
今回、カザフスタンの首都アスタナで開かれる首脳会議には胡錦濤国家主席が早くから乗り込み、「上海協力機構の精神は相互信頼と相互利益である」と強調。中国の影響力の大きさを見せつけている。将来、アメリカ主導のNATOに代わる「非西欧同盟」を目指す意気込みが漲る。実際、アフリカや中南米諸国からも強い期待が寄せられており、加盟申請が続く。
一方、アメリカや日本はカヤの外に置かれたまま。残念ながら、「辞める」と公言する菅首相のもとでは、創造的な外交など期待すべくもない話。ところが今週から来週にかけ、経産産業相、外相、防衛相、経済財政相など閣僚から相次いで国際会議出席と称して外遊したいと申請が出されている。
辞める前に何をするのかはっきりしない内閣の大臣らが先を争うように海外に出かけ、いったい何を語るというのか。海外にまで恥をさらす「風評被害」は止めてもらいたい。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。
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