16日、福岡市博多区のIPホテルで、元西南学院大学商学部教授、立石揚志氏の退任記念セミナーが開かれ、アジアビジネスに関わる経営者など約50人が聴講した。
<中・米関係におけるアメリカの真意と中国のとらえ方>
東日本大震災で、日本は内向きになっている感が否めない。しかし、その一方で、アジアは風雲急の動きを見せている。とくに中国をめぐるアメリカ、日本の戦略的対話をかんがみると、日本の大手メディアが報じている解説と、どうやら少し異なる様相を呈している。
そもそも日本から見るアメリカは、共和党があったり、民主党があったりと政治的には、複雑で難解だが、アメリカが中国に対して向けている顔はもっと複雑だ。ここにきて、中国とアメリカはついに運命共同体になったと言わざるを得ない。その理由は金(ゴールド)とドルの関係に象徴される。金の価値はどんどん上昇し、ドルの価値は下落している。中国はこれまでに膨大な額のドルを買っている。中国の外貨準備高、約3兆ドルのうち、大部分をドルで持っている。ここ最近、金の価格が上昇しているが、それはいろんな国が金に変えて買い増しているからで、金の上昇は国家保有が要因とされている。中国はドルを保有し続けることで、一生懸命アメリカを支えているのだ。中国とアメリカはドル紙幣をお互いの体の間に挟んでダンスをしている、と揶揄されているのだ。アメリカと中国はG2のような動きになっている。その両国の関係を頭に入れておかなければ、日本の政治や経済も大変なことになるだろう。
<アメリカに対する評価と今後>
日本の経済は、これまでアジアのなかでは、大変居心地良く過ごせていた。アジアのどこにいてもちやほやされる存在だった。それが最近、経済的な影響力にも変化が出てきている。
歴史をひもとくと、アメリカは毛沢東政権を支持しようという動きもあった。それが1950年の朝鮮戦争の際に、アメリカは日本を支えていこうという方向に舵を切ったのだ。その時流に、日本はうまく乗ったのか、長い間、アメリカと良好な関係を築いてこられた。それまでのアメリカとの付き合い方については、私は間違っていなかったと思う。なので、アメリカもある程度は、日本の存在を認めてやらないといけなかったのだろう。経済評論家の大前研一氏や寺島実郎氏などは最近、中国を大きな存在と捉えている。彼らはアメリカに人脈も広く、アメリカ好きな人物だが、そんな彼らでも、アメリカにしがみついていてはもうだめだと説いている。簡単に言えば、アメリカの時代は終わったということだ。ただ、日本の政治家や官僚たちの間で、そう思っている人はまだ少ないのが残念だ。
ほんの最近まで、日本の貿易額の約3割は対アメリカだったが、今は12%程度に落ち込んでいる。その一方で、対中国の貿易額は、5%から20%へと成長している。アセアンとかアジア全体を含めると、全体の約5割になる。アメリカばかりに向いていた頭を、そろそろ切り替えないと、現実を注視しないといけない時期に来ていると思う。
【杉本 尚丈】
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