福岡センチユリーゴルフ倶楽部をはじめ、全国各地で有名ゴルフ場の大型倒産が相次いでいる。多くは景気低迷による消費低迷や預託金返還請求問題を抱え、民事再生法などの法的手続きを取り、債務の整理を図っている。各ゴルフ場が抱える預託金返還請求問題とはなんだろうか。
預託金返還請求問題とは、ゴルフ場を開発する際、会員から集めた預託金が据置期間を経過しても会員に返せないことを言う。バブル経済のなか、ゴルフ場の開発をする手段として、初期投資を抑えるために新規会員から預託金として資金調達を行なう方式がとられてきた。会員とゴルフ場の間で、預託金の据置期間を経て会員に返すという約束をするのだが、ゴルフ場の新設には上述の通り、預託金のほとんどが当てられる。また、ゴルフ場運営の利益に対して、期間経過後に返さなければいけない金額は大きく上回ってしまう。それでは、なぜこの仕組みが成り立っていたのか。
以前は、会員権市場の市場価格が預託金額より高かったため、預託金をゴルフ場に対して請求するという行為自体が生まれなかった。しかし、バブル経済の崩壊を機にゴルフ場運営業界は大きな転機を迎える。市場価格は右肩下がりとなり、会員権の市場価格はついに預託金額を下回るようになった。据置期間が経過し、返還請求権のある会員は、市場へ売却するよりもゴルフ場に対して請求するようになる。しかし、それでは少数の返還請求には応じられても、徐々に請求に対して支払う源泉がなくなってしまう。返還に対応しきれず、経営再建に断念し法的手続きによる債務整理を行なう。これが全国で相次いでいるゴルフ場破綻の大きな流れだ。
ゴルフ場側の対処としては、据置期間の延長という手段がある。これは、返還期間を経過し請求されることを避けるために期間を延長するというもの。しかし、その場しのぎの方法でしかなく、ゴルフ場側の一方的な期間の延長は法的に認められないケースが多い。
その結果、よく取られる手段となったのが、民事再生法だ。ゴルフ場側にとっては、ゴルフ場自体を手放さずに債務の大幅なカットが見込めるため、メリットの多い選択肢である。実際、数多くのゴルフ場が民事再生法による債務整理を行なってきた。しかし、これでは債権のある会員は見捨てられてしまう。そこで債権者の対抗する手段として挙げられるのが、改正された会社更生法だ。安易に民事再生法の手段を取らせず、経営陣を退陣させ、債務に対して厳しい責任を負わせることができる。
かつてゴルフ場開発の手段として、一般に行なわれてきた預託金型会員権を使ったビジネスモデルは崩壊している。多くのゴルフ場が経済低迷によるゴルフ人口の悪化にともなう売上減少と預託金返還問題に悩まされている。しかし、それは開発当初の甘い見込みによるものでしかなく、債権者は自身の資産を守るため、厳しい対応を迫り続けなければならない。
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