<海外事業で生き残れるか(2)>
プレハブ住宅と言えど施工は建築現場にあることには変わりはない。30年前、積水ハウスが西ドイツ(当時)に進出した時、現場の作業員はドイツ人でなく、トルコなどの出稼ぎ労働者が主体であった。そのため現場管理、品質維持を徹底させることが難しく、クレームの山となり、損失が出る一方であった。結局、"高い授業料"を支払い、西ドイツから撤退した。
そのような苦い経験を持つにも関らず、当時と状況は違うが、再び海外に販路を増やそうとしている。10~15年後には、この海外事業の売上1兆円を目指すとしているのだ。アドバルーンは高いほうがマスコミの受けはよいが、根拠が不確かに思える。
とくに前述したように、膨大な人口を擁し、経済発展著しい中国に主力を置いていることが危なかしい。オーストラリア、アメリカ、シンガポールへ業務提携で都市開発のノウハウを提供しても、ほとんど現地の業者に実務を任せ、利益は出資比率で配分される方式だろう。しかし、中国では、形は合弁であっても資金はほぼ100%近く拠出、工場の建設と資材の仕入れ、設計・施工、住宅販売などのノウハウは、積水ハウス主体で中国人に教育し、運営していかざるを得ない。
金は出し、知恵を出し、口は出されるのが中国だと思われる。500億円投資するにしては、準備不足があるのではないか。言うまでもなく中国は人口が多く、13億人のうち富裕層が日本の人口1億2,000万人ぐらいはいる。年間2,000万戸は建築されているというのが中国進出の根拠らしいが、甘い希望的観測では大きな間違いを起こすだろう。
日本の年間80万戸と比べれば25倍である。魅力のある市場には間違いない。しかし、どのような家を売るのか、日本のセキスイハウスをそのまま売れるのか。コストが高すぎれば、中国市場との乖離は激しいものとなる。そのため中国仕様も考慮しなくてはならないし、コストを引き下げねばならない。
販売システムも作る必要もある。代理店販売なのか、自社の直販なのか、代理店なら信用のある販売店の選別、これは至難の技だろう。直販なら、社員教育、大金を扱う社員の信用問題など、日本では考えられないチェック体制の構築が必要となる。
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