<中国進出のリスクを乗り越えられるか(2)>
積水ハウスは、中国審陽に2,000棟の生産能力を持つ工業化住宅工場の建設を着工、11月に竣工、12月には稼働を開始するとしている。今の中国政府は、不動産投資の過熱化、インフレの加速を抑えるため昨年(2010年)10月から金融の引き締めを徐々に行なっているが、今回で5回目、7月7日から、法定貸出金利を0.25%引き上げると発表した。
7月9日に消費者物価指数が6月は6.4%上昇したと発表した。5月が5.5%だったから物価の上昇は止まらず、年内、再度の利上げもあると言われている。さらに、家電、IT産業を中心に労働コストの上昇圧力が強く、賃金も二桁のアップも行なわれている。
日本の80年代のバブル時代と同じ動きである。過熱気味の物価上昇、不動産投資を冷やし、バブルが崩壊しないよう、当局は必死である。
経済抑制策がうまく行き、軟着陸ができれば、中国の安定的な発展も期待できるが、微妙なところだろう。そのような背景もよくよく検討された結果の「中国進出」の決断だったと思う。しかし、500億円投資をするという意気込みはあっても、具体的な経営計画も出ていない。
蘇州に積水置業管理有限公司の子会社の設立と審陽に生産工場の建設と審陽市タウンハウスで、3年でマンション、商業施設、住宅などで、2,000億円の売上を見込むとの派手なマスコミ向けの概略の計画だけである。
日本国内で3年で2,000億販売するのに、どれほどの組織がいるか、ひとつの営業本部くらいの組織、人員がいると思うが―。
管理部門、営業部門、施工管理部門、施工体制、アフター部門、相当な組織と人員が必要である。それを日本人で行なうことは出来ない、ほとんど90%以上は中国人に任せなければならない。
日本並みの営業サービス、施工の品質、アフターサービスを確保ができる体制について中国人を教育研修しなくてはならないだろう。日本人とまったく考え方の違う、自分の主張ははっきり言う、気質の違う中国人を営業マンに、現場監督に、職人に、日本的感覚で言うようにはなかなか行かないと思う。
安易な考え方をしている企業ほど、労働争議に巻き込まれたり、トラブルを起こしたりして撤退を余儀なくされることが多いと聞いている。
積水ハウスには労働組合もない。したがって、労務管理のプロは育っていない。中国は共産党総本家、労働組合の総本山であることは忘れてはならない。
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