<積水ハウスは未来を海外事業に託すのか(2)>
円がドルに対し短期的だと思うが、7月12日、79円台、ユーロに対して111円と急騰している。世界の経済と金融は一向に安定しない。先行き不透明な時代に突入している。海外市場をねらうということは、この世界の激しい渦に、否が応でも巻き込まれるということだと思う。
積水ハウスは海外事業に方針を決定したのだから、何が何でも成功してもらいたい。このシリーズで縷々(るる)述べてきたように、幾多の苦難とリスクが待っていると思う。積水ハウスには多くの優秀な人材がたくさんいる。50年の栄光ある伝統により、必ず苦難を乗り越えて、さらなる発展への底力を発揮するものと信じている。
この度の東日本大震災に対し、積水ハウスのお客さんの危機を救おうと思う心がいかんなく発揮されている。静岡工場で、非常用に備蓄された救援物資が、通信機能を断絶されたなか、大渋滞を昼夜の強行軍で、震災の翌日には、どこよりも早く被災されたお客さん(オーナー)のもとに支援物資を届けた。
4カ月過ぎようとしているが、全国から、積水ハウスグループ社員、協力施工業者のみなさんなど、延べ数万人が被災地に入っている。被災地のお客さん(オーナー)には絶大な信頼を寄せられているのだ。
阪神淡路大震災の時も同様の支援活動を行なった積水ハウスは、絶大な信頼と評判を頂いた。お客さんを大事にすることは、企業理念「人間愛」を行動で示すことと全社員に行き届いているからだと思う。積水ハウスにかかわるあらゆる人々の幸せを願っての行動である。この理念がきっちりと、全社員に行きわたっているなら、必ず存続し続けると信じている。
しかし、社員がいくら優秀であっても、積水ハウスの経営者が先を見通す力と変化に対応する力を持っているかである。経営環境の変化に対し、将来を洞察し、予測せぬ事態に、的確に対処する能力を持っていなければ、いかなる企業と言えど、存続していくことはできない。指導者、経営者の無能は、国を、会社を、破滅へと導きかねない。日本は福島原発事故以来、再生可能な自然エネルギーに、エネルギー政策を変えようとしている。
電力コストは1キロワットあたり、火力7~8円、原子力5~6円、太陽光49円、風力10~14円と言われている。自然エネルギーを高くても、コストで買い取る義務を、電力会社に負わせる法律を作ろうとしている。そのような追い風が吹くなか惜しむらくは、500億円の投資資金を、「二酸化炭素排出量ゼロの住宅」の開発のため、小型で、安価な蓄電容量の大きいリチウム電池の共同開発、全戸に太陽光発電機を搭載したスマート・グリッドを構築されたニュータウンの開発などに資金投入されたなら、次世代の住宅へと展開ができたのではないかと思われる。
パナホームは、親会社のパナソニックとスマート・グリッドを開発中、トヨタホームはトヨタ自動車とハイブリッド車、電気自動車と住宅にプラグインしたスマート・グリッドの開発を検討中と伝えられている。各社、新しいシステムの開発にしのぎを削っている。
しかし、積水ハウスは大きく中国を主体とした海外事業に舵を切った。10年後には、成功して、要らぬ取り越し苦労であったと思わせるように、さらに大きく発展していることを祈っている。
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