中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
中国から、またひとつ世界一が誕生した。中国共産党結党90周年記念式典を翌日にひかえた6月30日、青島海湾大橋(青島膠州湾大橋)が開通した。
この海上に架けられた大橋の全長は36.48km、海上架橋としては世界最長となった。これを九州自動車道で例えると、福岡インターを起点として、北に向かえば八幡インター、南に向かえば久留米インターまで連続して「道路の下が海」というとんでもない長さの橋なのである。
2006年12月に着工、総工費100億元(約1,250億円)を超える資金を投じ、4年半の歳月を経てようやく開通にこぎつけたという。現地のメディアによれば、膠州湾を横断する形で建造されたこの大橋は、設計速度が時速80km、震度6以上の地震にも耐え、100年に及ぶ耐用年数を有する中国橋梁技術の象徴だと賞賛している。
世界最長の海上大橋とともに、「膠州湾海底トンネル」も同時に開通した。こちらは膠州湾の南端部、青島市内と黄島地区を結ぶ全長7.8kmの「中国最長の海底トンネル」。関門トンネルの2倍ほどの距離を有するこの海底トンネル、青島市民にとっては世界一長い海上大橋よりありがたいようだ。
これまでフェリーを利用するか、膠州湾を1周しなければ行けなかった対岸部に、たった2元(約25円)のバス代で行けるようになったからだ。2元のバス代で総工費36億元(約450億円)といわれる海底トンネルの工事費はとてもまかなえないだろうが、このトンネルの開通により、今後黄島地区が飛躍的に発展するだろうと予測されている。
6月30日のこの日、「おらが街に世界一と中国一」が同時に開通したことにより、国際観光都市を目指す青島の市内はお祭り騒ぎ、「あまり意味のない世界最長の海上大橋は税金の無駄遣いでは?」などという人はひとりもいなかったようだ。
同時に開業した北京と上海を結ぶ高速鉄道では長さ164kmにおよぶという世界最長の鉄道大橋もある。
経済の牽引役となるとんでもない公共投資は今後もさらに続きそうだ。
【杉本 尚丈】
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