中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
日本でも大きく報道された浙江省温州での中国高速鉄道事故、死者39人、重軽傷者210人と報じられているが、とにかく謎が多い。日本人の感覚ではありえない不思議なことが次々におこっている。
23日午後8時半頃に発生した事故、事故後たくさんの上半身裸の群集(警察?野次馬?ボランティア?物盗り?)が事故現場に集まり、収拾がつかない状況だったのだが、24日未明には遺体捜索が打ち切られ、車体の解体作業が始まった。事故原因のカギをにぎる先頭車両はバラバラに解体され土に埋められてしまった。
事故発生後1日半で運転を再開、土に埋められた先頭車両は掘り返され、泥土とともに運び出され、他の車両も乗客の荷物や行方不明者の捜索もしないまま運び出された。3日後には遺族に対して賠償金50万元(約600万円)を提示、遺族たちは「原因究明と謝罪が先だろう」と温州南駅で座り込みを続けている。
まるで早回しのフィルムを見ているようだ。
2008年4月、中国山東省で発生した列車脱線衝突事故、死者72人、重軽傷者400人以上出した大事故だが、この事故でも翌日には運転を再開している。日本の場合、2005年に兵庫県尼崎市で起きた福知山線脱線事故では、現場検証や安全検査に1カ月以上を要し、営業運転を再開したのは55日後だった。
現在の中国鉄道部長(鉄道大臣)は今年(11年)2月に汚職疑惑で失脚した劉志軍の後を受けて就任したばかり。23日に発生した事故のあと、早々に管理責任者の上海鉄道局長を解任したものの、その後任に就いたのは山東省の列車事故の責任を取って左遷されていた安路生という人物だ。
はたして、安全を軽視した汚職まみれの鉄道行政にメスが入るのか、最高人民検察院(検察庁)が動き出したと伝えられるが、今度こそ、単なる「鉄道省内部の人為的ミス」で幕引きにしてほしくないものだ。
【杉本 尚丈】
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