<買物難民対策でテレビでも話題に>
今年(2011年)4月20日に事業停止し、その後、破産手続を行なったジーアンドアイ(株)が運営していた食品スーパー「食歳時記あまぎの市」(福岡県朝倉市甘木)。現在、元従業員らを中心に店舗近くや駅前などで早期の営業再開に向けた署名活動が行なわれている。事業停止翌日から行なわれた署名活動には6月末時点で約4,000人が署名に協力。早期再開を求める声が地元で強まっている。
同店は、西鉄甘木バスセンター横に位置し、朝倉市の中心部にある唯一の食品スーパーだった。とくに車の使えないお年寄りなどが気軽に寄れる店舗として地域住民に重宝がられ、現在、社会問題にもなっている"買物難民対策"にもなっていた。今年2月には同店のこのような取組みを地元テレビ局が特番を組み紹介、また、地元の新聞社が地域面で特集を組むなど、社会性のある店舗として知られていた。
しかし、2006年11月の創業当時から資金繰りが悪く、ギリギリの所で店舗運営がなされていたが、4月20日夜に営業再開の目処が立たなくなったため、急遽閉店。閉店翌日の朝には買物に訪れた客が店前で戸惑う姿が散見された。「歩いて来れる場所にあったスーパーなので、とても役に立っていました。突然の閉店はとても残念です」とは、近所に住む主婦。「私は車が運転できんのでこのお店がなかったら、せがれに車で郊外のスーパーに連れてもらわないかんから不便になる」と、お年寄りの男性は呟く。
<新スポンサーが名乗り>
これらの声を受け、元従業員らで署名活動を地道に行ない、集まった声は4,000人。担当弁護士らの声かけにより後継スポンサーに久留米市のとある企業が名乗りを上げた。同社はあまぎの市に勤務していた全従業員を希望があれば再雇用する考えも明らかにしている。
しかし、大きな問題がひとつだけ残っている。あまぎの市の店舗不動産を後継スポンサー候補の企業が購入しようとしてるが、債権者の筑邦銀行が判断を決めかねているからだ。しかしながら、破産物件であるため時間が経てば競売物件となる。競売になれば価値が下がる可能性が高くなり、筑邦銀行にとってもマイナスになる可能性がある。営業再開のカギは筑邦銀行が握っているといっても過言ではないが、同銀行甘木支店の担当者はこのことについて「当案件は本店と当店で担当していますが、個人情報なのでお答えできません」とコメントしている。
同店のある朝倉市甘木にはかつて、西鉄ストアを併設したバスセンターがあったが、1990年代後半にバスセンターの機能を残し西鉄ストア甘木店は撤退。隣接地のマルショク甘木店は、6年ほど前に閉鎖となった。近くにユニード(ダイエー)、タイホーもあったが、両社とも数年前に撤退。バスセンター近くにあったコンビニのセブンイレブンも店じまいしたほか、アーケード商店街も人通りがまばらなシャッター通り化している。この地域に出る店舗は1年足らずで撤退もざらにあり、小売店を運営するのが難しい地域とも言われている。あまぎの市が閉店して、お年よりを中心とした地元住民は買物に行く所がない"買物難民"状態を余儀なくされている。「早く再開してほしい」と弊社にも地元住民からお便りが寄せられることもある。筑邦銀行の英断が期待される。
【矢野 寛之】
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