栄華を極めた都築学園グループも、近年になり財務状況が悪化してきていることは前回述べた。グループ全体として収支が厳しくなってきているのだが、とくに大学の落ち込みが激しい。グループの中核である都築学園の業績推移を細かく見ていくと、その深刻さが浮き彫りになってくる。学生離れの現実は、同学園に予想以上のスピードで押し寄せているようだ。
<数字が表わす加速する学生離れの現実>
都築学園の2008年~10年の業績推移を見ていただきたい。同学園の08年3月期の売上高(帰属収入)は119億4,026万円で利益(収支)は▲58億9,406万円。これが09年では売上高369億4,195万円となり利益は262億4,188万円。10年では売上高119億5,413万円で利益が▲36億8,511万円となっている。
09年に売上高と利益が極端に増加したのは、寄付金収入286億円余りが帰属収入に組み込まれているためであり、あくまで突発的なものだ。詳細が不明な点はあるが、新たに都築学園に加わった近畿医療福祉大学の収入として計上されている寄付金118億円余りが大きく寄与していると考えられ、実際の業績が回復したわけではないことは明らかだ。その証拠に10年の売上高は119億円と08年水準に戻っている。
08年と10年の売上高は同水準に見えるが、実際の業績は大きく異なる。それは売上高の大半を占める学生生徒等納付金(以下、納付金)の学校ごとの推移を見れば一目瞭然だ。都築学園の納付金は08年が92億円、09年が70億円、10年が99億円だが、これは新たに加わった学校の納付金で底上げしているに過ぎない。もともと最大の収入源だった第一薬科大学の納付金は08年が57億円、09年が39億円、10年3月期は21億円と大幅に落ち込んでいる。この3年間の落ち込みだけでも驚くが、同大学の納付金が03年には110億円余りあったことを考えれば、実に8割の減少ということになる。
ほかの学校の納付金もほとんどが減少しており、この減少分を新たに加わった近畿医療福祉大学、日本薬科大学の納付金で埋め合わせている格好だ。両校の10年の納付金は16億円と33億円であり、これらを全体の99億円から差し引くと約50億円。つまり08年に92億円あった納付金が50億円にまで落ち込んでいることがわかる。
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