先日、自称「元派遣コンパニオン」の女の子(以下、A嬢)と飲む機会があった。聞けば、A嬢がいた派遣会社は中洲の某大手。しかし、派遣先は主に佐賀県武雄市であったという。武雄市と言えば、九州有数の温泉地。最近では、頭の切れる元霞ヶ関官僚の樋渡市長が、「いのしし課」や「佐賀のがばいばあちゃん課」などユニークな部署の名称をはじめ、旧い行政組織の体質を刷新する手法で、全国的にも注目を集めたところだ。
武雄の飲み屋にいる子が実は中洲から来ているとは...。それも20名前後のコンパニオンが週6日乗り込むという。マイクロバスで往復約4時間、中洲と武雄は決して近くはない。「夕方4時から髪のセットをして、バスに乗って向こう(武雄)に着くのが8時開店の10分前ぐらい」(A嬢)と、やはりタイムスケジュールは厳しかったようだ。
店の営業が終わり、家に帰りつくのは午前4時を過ぎることがほとんど。基本的に店が閉まれば、すぐに帰りのバスに乗り込むのだが、「アフター」もあるという。とは言っても、バスに乗って帰る場合、時間的猶予は15分前後。お客さんが飲んでいるところに顔を出し、駆けつけ1杯でビールを一気飲みであわただしくその場を去るしかない。「長居できないなら行かなくてもいいのでは...」と思うのだが、武雄のお客さんも慣れたもので、乗車時間を把握しており、無理に引き止めることはない。
そのような生活をA嬢は約半年間続けた。時には、長崎県佐世保市にも派遣で遠征したという。「さすがにきつくなってやめました」というA嬢。心残りは、半年も通っておきながら、1度も武雄温泉に入浴することができなかったことだ。「1回だけ、プライベートで武雄に行きました。電車に乗って。だけど、いつも派遣先の店にバスが乗りつけるし、店の外を出歩くこともないから、土地勘はゼロ。結局、迷子になって、武雄の店の人に探し出してもらいました」と、ため息まじりで語った。
移動時間がかかる遠征軍は、中洲の店に派遣される場合よりも稼ぎが少しいい。ただし、A嬢の話によると「最近は地元の女の子が増えたので、派遣される人数が減ってきた」とのこと。武雄ではよそ者になる小生としては、やはり飲み屋の子は『地産地消』が好ましい。
【長丘 萬月】
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