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松本龍復興大臣辞任劇の裏側で進む"地元排除"の宮城県復興計画(後)
政治
2011年7月 8日 07:00
副島国家戦略研究所・中田 安彦

 さて、問題があるとすれば、そのあとに松本前大臣が口走った「はい、今の部分はオフレコです。書いた社はこれで終わりだから」という部分である。他の発言の部分では松本前復興大臣を擁護してきた私であるが、この発言だけは閣僚として不的確であり、このひとことだけで辞任は免れないと思っている。それはなぜかというと、松本前大臣の発言は憲法違反ではないかという疑いがあるからだ。憲法では21条と99条に次のような規定がある。

<第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。> 
<第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。> 
 
 つまり、「これはオフレコです。書いた社は終わりです」ということを、公務の際に国務大臣である松本氏が言ったということは、憲法21条の言論の自由と99条の憲法尊重義務に対する違背であるとも取れるわけだ。

復興担当大臣を辞任した松本龍氏  宮城県庁でのビデオ映像を見る限り、「オフレコだから」発言の際、村井知事も苦笑しているし、映像では一瞬しか映らないが松本前大臣も笑っているように見える。だから、これは彼なりの冗談だったのかもしれない。だが、それは県庁での録画映像がニュース用に編集されているため分からない。もっと言えば、「問題発言」とされたほかの部分も都合よく切り取られて悪印象を持つように編集されているようにも見える。映像素材を持っているのはテレビ局であり、彼らは素材を自由に編集して放送する"権利"を持つ。これが「編集権」というものである。編集権という「刃物」を駆使すれば、マスコミが望むようにいかなる印象でも視聴者に与えることができる。これは恐ろしいことだ。

 マスコミが「第4の権力」と言われる所以であり、彼ら自身が自省的にならなければならないのだが、最近は小沢一郎民主党代表に対する報道が示すように、悪役をつくり出して意図的に国民の関心がそちらに向くように誘導する。これは、ジョージ・オーウェルの小説『1984』が描いた国民洗脳国家の姿そのままである。この小説の世界では、権力者が決める"悪者"を嫌悪するための毎日の「二分間憎悪」は国民に義務付けられている。今の私たちも、マスコミから常に何かを憎むように仕向けられている。しかし、本当の問題は、その憎しみの対象ではなく別のところにある。このようにマスコミが巨大な権力になってしまっている。

 しかし、それでも「言論の自由」は、権力者によって尊重されなければならない。権力者が何かを批判する場合は放送、出版された後に抗議する、というかたちで本来は行なわれるべきなのだ。だから、この松本前大臣の発言を受けて1社でも自粛したり、「この内容は記事にしないでおこう」と考える結果になったら、それはやはり21条違反だろう。憲法というのは「権力者に対する命令」であり、権力者はそれを遵守することを当然のように誓約している。

 そして、私が問題にしたいのは、そのような「憲法認識」に絡む発言と、そのほかの「不適切な発言」を単に「恫喝」としてしか表現・報道できないマスコミである。おそらく「オフレコ発言」に関しては、マスコミの記者は似たようなことを、政治家、官僚、財界人たちから、くり返し、くり返し言われているのだろう。オフレコ発言があるからこそ、新聞記者の取材が成り立つとも言えるからだ。オフレコ発言があってこそ、他社を追い抜くスクープが生まれる。その意味で、権力者とマスコミは持ちつ持たれつの関係なのだ。

 本来、憲法違反の疑いを持つ発言をやってしまう閣僚を任命する総理大臣の責任こそ重い。憲法の精神に照らせば、内閣総辞職になってもおかしくない。ところが、その視点で菅政権を糾弾したマスコミ人を私は知らない。松本前大臣にも、「グラサン姿」など奇抜なパフォーマンスなどの問題がなかったかといえば嘘になる。しかし、彼が怒った理由を考察せず、オフレコ発言を報道するなといった「言論弾圧」紛いの発言に鈍感になり、ひたすら「被災地の感情を逆なでした」とヒステリックになっているマスコミは、その本来の使命を見失ったとしか私には見えない。これでは建設的な議論などできないではないか。

 そしてマスコミが「大衆ヒステリー」を煽る一方で、九州の「危険な原発」と言われる「玄海原発」は着々と再稼働に向けて準備が進められている。松本前大臣の暴言などよりも、マスコミはほかにもっと問題にすることがあったのではないか。

 皆さんはいかが思われるだろうか。

(了)

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<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

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2011年7月27日 18:05
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