<中国第4の都市、深圳市>
都市人口891万人、周辺人口を含めて1,400万人、ほぼ東京に匹敵する。深圳市が中国の他の都市と決定的に違う点、それは「都市自体が30歳になったばかり」ということだ。
1980年に中国初の「経済特区」に指定され、それまで人口3万人たらずの小さな漁村がわずか30年で高層ビルが建ち並ぶ近代都市へと変貌したのである。そのため、住民の8割以上が他の地域から移転してきたいわゆる「移民都市」といわれ、平均年齢は推定28歳と若く、とても活気に満ちた都市なのだ。
一人当たりの年間地域内総生産(GRP)は上位3都市を凌ぎ中国トップ。平均年収は上海の73.5%にもかかわらず「可処分所得は全国一となっている」という。
香港にいちばん近い都市「深圳」はファッション、カルチャー、美容など中国で最先端の若者文化を築きつつあるようだ。
<消費意欲旺盛な中間層>
中国が語られるとき、一部の富裕層と農村部に代表される低所得層の両極に目を向けられがちだが、華南地域に代表される広州や深圳では、かつて高度成長期の日本が「1億総中流時代」といわれた頃とよく似た現象が見て取れる。
それは中間層の台頭だ。
「温暖な気候も手伝って、将来の不安、つまり"飢えと寒さ"を知らない広東省の中間層は、所得が上昇した分だけそのまま消費を増やす気質にあるのではないか」とジェトロ広州の池辺副所長はいう。
<新高速鉄道「広深港高鉄」>
2011年には広州―深圳間が開通し、さらに2015年には香港まで開通する予定で、広州―深圳―香港間がわずか41分で結ばれることになる。
周辺の県級都市を交えて商業圏を拡大する「広州」、香港との一体化を加速させる「深圳」。この2大都市と香港が面としてつながっていけば、世界の中心地となる日もそう遠くないように思われる。
【杉本 尚丈】
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