<狭義の独禁法から広義の独禁法へ>
従来、公正取引委員会は独占禁止法に基づき、M&Aや合併により単一の企業が国内市場を独占する恐れがあるか否かの判断は、シェアを基準としていた。つまりシェアという機械的な尺度を重視して合併などを規制していたが、2004年以降は個別の市場状況などを考慮し判断するようになり、ある企業の市場占有率が高まったとしても、他の企業や国外から十分な商品の供給が行なわれるならば、合併などを規制しなくなっていた。また、「市場」の範囲も、単一の商品だけでなく関連する商品なども含めたある程度広い範疇で見るようになってきていたが、あくまでも国内市場を睨んだものであり、狭義の独占禁止法の適用であった。
今回の改正産活法では、国内市場から国際市場を見据えた広義の独占禁止法へと衣替えすることになる。国際的な競争に勝ち抜く観点から、業界を所管する閣僚が公取委の審査に対して、合併など企業の事業計画に関し、意見や情報を提供することができるようになる。公取委は意見に対して回答しなければならない。公取委は企業のグローバル化に対して合併審査の迅速化や透明性の確保が求められている。
今回の新日鉄と住金の大型合併が認められた場合、合理化による国内の生産拠点の集約に伴う従業員の配転・削減による地域経済への影響や企業のグローバル化による海外への工場移転による国内産業の空洞化が予想されるなど、その結論如何によって大きな社会問題化する要素を含んでおり、公取委の判断は日本の産業構造の変化に大きな影響を与えることになる。
【北山 譲】
*記事へのご意見はこちら