7日、柳川市議会最終日は、約9,624万円を増額する平成23年度一般会計補正予算案(総額で約268億5,474万円)などを可決して閉会した。補正予算の内容は、柳川駅周辺土地事業費、JA柳川の活力ある高収益園芸産地育成事業補助金など。一方、国保料税率アップも可決された。
3日間の一般質問には、24議員中13名が質問に立った。質問の主なものは、就任から2年余りを経た金子市長のマニフェスト評価について、ふたつ目は、合併特例債の活用方法などの財政問題、三つ目は、柳川市の活性化に向けた諸施策を問うものだった。
ひとつ目のマニフェストの進捗状況・評価では、(1)総合運動公園整備事業が白紙になったこと。(2)水環境の再生が遅れていること。(3)かわの駅、まちの駅は当初の見通しが立っていないと指摘し、重要施策である総合運動公園が白紙になったことは重大であると批判。さらにツーリズム特区の実現は厳しいのではないかと詰め寄った。これに対して金子市長は、「マニフェスト47項目のうち85%は着手しており、残りの期間で充実させていく」とかわした。
ふたつ目の財政問題、とくに合併特例債の使い道については、昨年(2010年)5月に出された中期財政計画や第二次行財政改革との関連が質問された。14年度で終了する合併特例債は、09年度までに69億円を借り入れており、残り68億円全額を学校改築や道路建設などに充てることになっている(注)。合併後は、旧柳川庁舎が本庁舎、旧三橋、大和両庁舎が分庁として機能しているが、今年(11年)の4月以降、庁舎統合問題が協議されており、その財源を巡っては、137億円の特例債の制限を外し、別枠で合併特例債を借り入れるべきと市側は主張。これに対して、一部の議員からは「まずは財源論からやり直すべきだ」と中期財政計画の見直しや、合併特例債の安易な借り入れに反対する声も出ている。また既存施設の改修費用に合併特例債を充てる考えを示す金子市長に対して「改修などに本当に特例債が使えるのかどうか検討すべきだ」との質問もあった。さらに建設事業が先行し、市職員自らの身を削るなどの行革が遅れているとの指摘もなされた。
三つ目の柳川市の活性化については、「若者が夢と希望をもてるまちづくりのためにどういう具体策が打たれたのか」との質問があった。また「インフラが整備されつつある今こそ企業誘致の可能性もあり、税収増、人口増につなげていく必要がある。市長のリーダーシップが問われている」と追及の質問があった。金子市長は、「県との連携によって働ける場を確保し、農業・漁業者が夢をもって続けられるような施策を行ない、大牟田市などとの定住圏構想に基づき定住化を進めていきたい」「NECが撤退することになったが、その後については、名前は挙げられないが"明るい希望"がある」と新たな企業誘致の可能性を示した。また、柳川駅東部土地区画整備事業を進めており、あわせて西鉄との間で東口開設について概ね合意を得つつあり、利便性と活性化につながると市側は答弁した。一般質問ではこの他、東日本大震災や原発事故についての質問が出されたが、活発なものにはならなかった。
任期残り2年を切った金子市政は大きな岐路に立たされているといえる。昨秋の市議選以降の議長選出をめぐり、新会派が誕生し、これまでのような「市長派―反市長派」と単純に区分けできる状況ではない。大きな争点のひとつは財政問題である。合併特例債の枠と使い道をめぐっては、金子市長を支持するグループのなかでも是々非々の対応がでてきている。自主財源が乏しい柳川市にとっては財政健全化と再建のために合併特例債は両刃の刃である。さらに「金子市政になっても何も変わらない、スピード感がない」という市民の声もある。たしかにマニフェストは緒についたばかりだが、変化の姿が見えないというのだ。アスベスト問題も含めて、スピード感ある判断力と実行力、これが金子市政に問われている。これらが二期目を狙う金子市長にとっての大きな重しになっていることを印象づけた市議会であった。
【柳川通信員】
(注)合併特例債・・・99年~05年度までに合併した自治体に、合併後10年間に限って認められる借金。合併特例債は、対象事業費の95%の費用が借入でき、元利返済額の70%が普通交付税に算入される制度。柳川市の場合は、国の基準では約274億円まで借入可能であるが、合併協議の際、将来の返済を考慮して半額の137億円となっている。
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