福島第一原発事故の影響で、現在中国では日本からの食品輸入が制限されている。
こうしたなか、さる6月30日、福岡市の中小企業基盤整備機構九州支部セミナー室において、ジェトロ主催の「華南経済セミナー」が開催された。中国の「食品産業の現状」について、現地駐在員であるジェトロ広州流通部長、森 路未央 氏の生の声をレポートする。
<日本からの食品輸入はすべてストップ>
福島第一原発の事故以来、段階的に日本からの食品について輸入制限をかけられていたが、最近になって全面禁止の状態だ。ちょっと前までは一部禁止となっていたものの、通関に強い商社などを経由して輸入されていた。しかし、原発の状況が回復しない今、スーパーの棚から日本食品が消え、韓国食品に切り替わってきており駐在員としても生活するうえで非常に困っている。華南地域にはたくさんの日本式レストランが進出しているが、どこも流行っている。少なくとも華南地域においては「風評被害」という点でいえば「ない」に等しい。しかしながら、食材の日本からの調達が困難となってきており、各企業とも次第に食材の現地調達に切り替えてきているようだ。現在の中国では、数年前に発生した「中国毒入りギョーザ事件」の逆パターンとなっている状況だ。日本食品の一日も早い輸入再開を願っている。
<今こそ現地委託生産のチャンス>
「食は広州にあり」という言葉が示すとおり、華南地域は中国のなかでも際立って「食」に対する関心は高い。外食比率も高く、世界中からレストランチェーン店が数多く進出している。中国を市場として捉える場合、現在の環境下においては日本から製品の輸出を図るより、現地の日系製造工場への「製造委託」という形式の方が理にかなっているのではないだろうか。こうした製造工場は独自の販売ルートを持っているところが多く、製品の流通面や法制面でも輸入製品よりは有利に働く可能性が高い。特に中国国内の物流コストはインフレの進行により、極端に増加している状況だ。
【杉本 尚丈】
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