<若い企業家たちの動きも>
以上のような公的な取り組みに加え、若い企業家たちの活動が街の賑わいに彩を添える動きも徐々に見られるようになってきている。
モノレール平和通り駅に近い小倉・魚町三丁目商店街。かつては人でごったがえした商店街だが、今では人通りもまばらで、通りに面した商業ビルでさえ櫛の歯が欠けたようにテナントの空きが目立つ。そんな古い町並みのなかで、ひときわ若者の出入りが目を引く場所―それが6月1日にオープンした民間インキュベート施設「メルカート3番街」である。築50年は経つであろうビルの1、2階部分の延べ床面積は約200m2。そこに若手企業家が経営する15~40m2の小規模店10店舗がひしめきあうように軒を連ね、お洒落な若者が日々集う場所となっている。
築50年のビルとお洒落な若者を惹きつける最先端ショップとの組み合わせは、一見すると奇異に映る。この点について、ビルを所有する中屋興産(株)の梯輝元社長は、「若手企業家の持つ、古い建物の価値を理解して活用しようという発想に触れたことで、彼らの起業の助けになるのなら」との思いに至り、1㎡あたり2,000円という破格値で貸し出すことにしたそうだ。また、同所で「cafe CACTUS」を営む丹波地美希さんは、「起業したいというぼんやりとした思いはありましたが、ここに来て相談に乗ってもらううちに具体的なかたちになってきました。今起業しなければ、一生できなかったと思います」と胸の内を語ってくれた。古い町並みのなかに若い力の胎動が起こり、地区古参の経営者がこれを後押しする環境が整ったことで、新たな経済活動が生まれた注目に値する事例と言えよう。
ただ、「メルカート3番街」の事例にしても、もともとは商工会議所などが主催した街づくりの取り組みのなかで生み出されたものであり、その意味では小倉の町の活性化は公的機関の支援やアドバイスに頼っている部分が大きいように感じられる。活性化事業はあくまで勢いがつくまでの補助輪であり、真の民間活力なくして永続的な活性化は望むべくもない。事業予算の配分にしても、若い起業家の育成にもっと多くの資金を投じるべきではないだろうか。
【田口 芳州】
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