経産省と電力業界(原子力)との癒着の構図がわかりやすいかたちでうかがえるのは、「天下り」である。経産省は、東電など9電力全社と電源開発に天下りを送り込むのはもちろんのこと、電力会社を会員とする財団法人や社団法人を山のようにつくり上げ、そこの専務理事としてOBの面倒を見てもらっている。典型的な「専務理事政策」である。
専務理事政策とは、規制を武器に役所が天下り法人を設け、そこに退職したOBを押し込み、なおかつ補助金や委託研究費などの名目で税金を垂れ流すことを言う。電機から自動車、化学、流通など所管業界が幅広い経産省には、この種の天下り法人が数百というオーダーで存在するが、なかでも有力な天下り分野が電力・エネルギー業界である。経産省所管の約60の電力・エネルギー関連の天下り団体に、100人を超える退職者が天下っていることが明らかになっている。
こうした天下り団体に、エネルギー関連の国費がピンハネされているのだ。電力・原子力に関する予算は、エネルギー特別会計のエネルギー需給構造高度化対策費約2,800億円、電源三法交付金などエネルギー特会の電源開発促進勘定約3,700億円、文部科学省と内閣府の原子力予算約2,500億円―の総額9,000億円もある。経産省の一般会計分も含めれば、総額は1兆円に近いだろう。そのなかから、天下りの人件費や彼らの遊興費が捻出される仕組みだ。
たとえば、実力派次官だった村田成二事務次官が理事長に天下った独立行政法人「新エネルギー・産業技術開発機構」(NEDO)には、補助金、委託費、運営交付金などで総額3,000億円近くも投入されている。少なくとも4人も天下りのいるNEDOは、「第2エネ庁」のような機関で、ふんだんに流れ込む国費を、電力・エネルギー業界に研究助成などの名目で支出する。どのプロジェクトにいくらだけ流し込むかについては、NEDOの裁量の余地が大きく、したがって業界に睨みを利かす機関とも言える。
村田氏は02年に電力自由化を武器に業界と大立ち回りを演じ、同時期にあった原発データの改竄事件を機に、ついには東電の荒木浩会長と南直哉社長を辞任に追い込んだ大物次官である。要は、業界に対してデカい顔をしたいのだ。そんな村田氏のプライドをNEDO理事長職は満たしてくれる。
経産省なりエネ庁なり役所が直接業界に支出すれば済むものを、わざわざNEDOという別組織を設けて支出する仕組みにしているのは、そこに天下りのポストを確保でき、しかも業界に睨みを利かすことができるからだ。数十年をかけてできあがったそうした仕組みを、菅首相の思いつきのようなトップダウンのエネルギー政策によって破壊されてはかなわない。だから経産省は、OBを含めて気が気ではないのだ。
【尾山 大将】
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