きのう(17日)、朝日新聞の「ニッポン前へ委員会」が5月10日まで募集していた、東日本大震災後の日本のあり方を構想する提言論文の最終審査が行なわれ、1,745本の応募作から福岡市の(株)環境デザイン機構代表取締役・佐藤俊郎氏が見事、最優秀賞に選ばれた。
同委員会は有識者9名(※)で構成され、東日本大震災および原発事故からの復興と、その先の日本全体の再設計を論じあうために設立された。
今回受賞した佐藤俊郎氏は、データ・マックスの取材に対し震災復興への想いを次のように答えた。
「この論文は、私が30年間培ってきた環境設計の集大成です。10年後、2021年の日本の姿を想像しながら執筆しました。8,000字という限られた字数でしたので、具体的なものというよりは、これから何をしたらいいのかという概念、哲学のようなものを書きました。復興計画といっても10年後ですから、未来都市の構想ではありません。
日本は、30年、40年前から別の選択ができたと思います。それを選択しなかった結果が今回表れた。本文は後日掲載されるようですが、論文を読まれた方は、『何だ?こんな当たり前のことを』と思われるかもしれません。しかし、その『当たり前のこと』を今まで選択してこなかったわけです。過去、『土地を所有すれば豊かな老後を送れる』という神話がつくられましたが、『土地の所有』がどれほど危ういことかわかったと思います。
原子力発電所に関しては書いていませんが、これはどう考えても終焉(廃棄)を看とれない技術で『未成熟な技術』です。ケヴィン・リンチというアメリカの有名な学者は、『都市の廃棄』が都市計画の最大の問題としました。都市は創造の裏に破壊(廃棄)があり、これを真正面から捉える必要があります。この説に私は共感しています。
逆説的な言い方ですが、今回は創造的復興ではありません。いったん廃棄されたところから都市を創るため、創造的計画とはまた違った視点が必要です。たとえば、海水に浸かった田畑を生産用に戻すのは難しいですが、生物の繁殖地として創り直すなどの観点が大事です。
私は福岡県の糸島市長選挙に出馬しました。そのときは惜しくも敗れましたが、この経験から『自分が陸前高田市や釜石市など三陸地方の首長だったらどんな復興計画を描くか』―それを想像しながらこの論文を執筆しました」。
※<ニッポン前へ委員会 構成委員>
兵庫県尼崎市長・稲村和美氏、建築家・福屋粧子氏、津田塾大准教授・萱野稔人氏、東大特任准教授・神里達博氏、日本政策投資銀行参事役・藻谷浩介氏、劇作家・平田オリザ氏、千葉大教授・広井良典氏、大阪大教授・大竹文雄氏、東大教授・加藤陽子氏