東北地方を襲った大震災により、これまで「安全」を公言していた福島第一原発に事故が発生した。日本の『原発・安全神話』が完全に崩壊した瞬間だ。そして長きに渡り、人災とも言える放射能汚染が、福島の人々を苦しめることになる。
それでもなお、日本では、原子力発電を「社会に欠かせない」とし、手に負えないリスクを省みず、根拠を失った安全性を強調し、稼動の継続を訴える声がある。しかしながら、発電方法は原子力発電しかないわけではない。火力、水力、太陽光など多彩な発電方法があり、そのなかでも今、再生可能な自然エネルギーによる低炭素社会の実現が理想として掲げられている。
そのなかでも長期的に発電能力があるとされ、自然エネルギーの王者ともいわれるのが水力発電だ。本稿では、水力発電の歴史から現状までスポットをあてていく。
水力発電の歴史は古く、明治時代に鹿児島県の薩摩藩・島津家が自家用発電として水力発電を開始したのがはじまりといわれている。九州電力管内では島津家の水力発電所のほかに1889年(明治31年)7月、小山田の発電所が稼動。当時10ワットの電灯833個に電力が供給されたという。なお、記録に残るなかでの日本初の水力発電は、88年(明治30年)7月に運用が開始された宮城紡績所有の三居沢発電所。同発電所は現在も電気の供給を行なっている。
【道山 憲一】
| (2) ≫
*記事へのご意見はこちら