一方、電力の供給不安も相変わらず解消されていない。被災地での工場や企業経営に大きな支障が出ており、他県への移転、移住といったかたちで被災地を離れるケースにも歯止めがかかっていない。産業空洞化の恐れも十分にある。市民生活においても、上下水道の浄化処理もままならぬ状態が続いているため、汚染水が海に流されるなど、かつてない環境汚染が懸念されている。
加えて、大津波がもたらした塩害被害も深刻である。農業にとって壊滅的な被害をもたらした津波。米どころ東北地方の農家にとっては、いかにして土壌改良を速やかに行なうか緊急対応を要する課題が山積している。こうした難題を克服するためには、与野党、官民、地方と中央、そして各省庁の協力に加え、国際的な協力支援体制が欠かせない。
こうした状況を踏まえ、東日本大震災復興構想会議は『復興への提言』をまとめた。「悲惨の中の希望」と副題が付けられたこの提言には、復興にあたっての7つの大原則が掲げられている。
原則の第1は、失われたおびただしい命への追悼と鎮魂こそが、生き残った者にとって復興の起点となるという思いを大切にすること。大震災の記録を永遠に残し、その教訓を次世代に伝承するのみならず、国の内外に発信することを謳っている。
原則の第2では、被災地の広域性や多様性をふまえ、地域やコミュニティが復興の主体となることを強くアピールしている。国は復興の全体方針と制度設計によって、そうした地域主体の動きを支えるという発想にほかならない。すべてを国に頼るのではなく、厳しい状況ではあるが、あくまで復興の主役は被災地域の自治体であり、そこで暮らしを営み続ける地元の人々でなければならない、というわけだ。
原則の第3が、被災地の潜在力を活かしつつ、技術革新を伴う復旧・復興活動を目指すという視点である。被災地域の復興なくして日本経済の再生はないはず。また、日本経済の再生なくして被災地域の真の復興もありえない。この認識に立ち、大震災からの復興とたくましい日本の再生を同時進行で目指す必要があるわけだ。
原則の第4は、地域社会の強い絆を守りつつ、災害に強い安全・安心な町を目指し、自然エネルギー活用型地域を建設することとされている。
原則の第5は、大震災からの復興と日本全体の再生を同時進行で進めること。
原則の第6として打ち出されているのが、原発事故の早期収束を求めつつ、原発被災地への支援と復興により一層のきめ細やかな配慮を尽くすということである。
最後に原則の第7が、今を生きる日本人すべてがこの大震災を自らのことと受け止め、国民全体の連帯と分かち合いの精神によって復興を推進することである。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務政務官に就任。震災復興に尽力している。
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