注目すべきは、耳慣れない言葉であるが、提言のなかには「開かれた復興」という概念が強く打ち出されている点だ。その意味するところは、今回の復興が被災地だけにとどまらず、むしろ被災地における復興に向けたさまざまな創造的営みを、日本全体ひいては世界各国に広げていくという大胆な哲学が披露されていることにある。
これは、成熟した先進国家における大災害からの復興過程そのものを、この困難な時代を生き抜くための強力なモデルにしなければならないという発想にほかならない。
今回の大震災においては、発生直後から米軍をはじめ国際的な支援、協力の輪が広がった。日本人は改めて国際社会の一員であることを認識し、感謝の念を抱いたものである。こうした世界から示された共感と善意を基盤に、わが国とすれば速やかな復興計画を実施し、今まで以上に魅力的な絆あふれる国家として再生を果たさなければならない。
大震災により国際的なサプライチェーンが大きく傷ついたことは、日本と世界が経済的、社会的に深くつながっていることを内外の人々に再認識させた意味合いもある。われわれは国際社会との信頼関係を一層強化し、世界に開かれた復興を実現しなければならない。
幸い、国際社会からは震災直後の援助物資や義援金に加え、今後の新たな成長産業に資すると思われる環境、エネルギーに関連する、さまざまな協力の申し出が相次いでいる。アメリカからは空軍が採用を検討している放射能汚染物質を含むガレキをエネルギー源とするガス化発電技術の提供が提案されている。
これは、被災地の復興に大きな足かせとなっているガレキの山を再生エネルギーとしての宝の山に転換できる可能性を秘めている。コンクリート、鉄材、木材、ゴムなどあらゆる廃棄物を材料にし、環境にやさしい発電を行なうもので、すでに世界各国で災害被災地を中心として約300カ所で同種の発電プラントが稼働中である。
電力不足に直面する可能性の高い我が国にとって、こうしたガス化発電事業は日米のジョイントベンチャーとして検討に値するテーマではなかろうか。スピーディーかつ低コストでガス化発電所の建設が進めば、日米の信頼関係を深化させるうえでの象徴的なプロジェクトになるだろう。日米でともに展開した「トモダチ作戦」の次のステップとして、こうした新たな環境、エネルギー面での協力が実現すれば、世界的にも注目を集めるに違いない。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務政務官に就任。震災復興に尽力している。
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