4月上旬、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の3号機の定期点検が早まったことに関する筆者の問いに、九州電力(以下、九電)は以下のように回答した。
<九電「事故ではなく数値異常」>
――玄海原発が運転停止した理由は、燃料棒に微弱な穴があいていたためか。
九電 現在、玄海原子力発電所2・3号機は定期検査に入っており、運転を停止しています。 本検査は13カ月に1度行なうように決められたもので、当社は計画的に実施しています。 なお、ご指摘のとおり、玄海原子力3号機においては、ヨウ素濃度の上昇を受け、これに対応するために、定期検査を前倒しで実施していますが、もともと計画していたものです。玄海原子力発電所2号機においては、計画に基づき、検査を行なっています。
――事故原因の特定に時間を要するのか。
九電 玄海原子力発電所においては「事故」に該当するものは発生していません。 ここで表現されているのが、「燃料棒からのリーク」についてであるとの前提でお答えします。
リークが認められた燃料集合体1体の詳細調査を行なった結果、超音波による調査で燃料棒1本に漏えいが認められたことから、当該燃料棒について、ファイバースコープによる外観調査などを行ないましたが、異物の混入、損傷および著しい腐食などの異常は認められませんでした。
このことから、今回の1次冷却材中のよう素濃度上昇は燃料棒に偶発的に発生したピンホールからの微小な漏えいが原因であると推定しました。
なお、本件は平23年2月8日にプレス発表させていただいています。
――計画停電の可能性が大きいのか。
九電 計画停電については、実施の有無も含めて、詳細なことは決まっていません。 なお計画停電については、「事故原因の特定に時間を要す」ために発生するのではなく、福島第一原子力発電所の事象が安定していないことや国においても安全対策などについて今後の方針を検討していることを勘案し、玄海原子力2・3号機の発電再開時期を延期していますが、この停止期間が長期化した場合には、電力供給に影響がでる懸念があると考えています。
――運転を止めた詳細は、東北関東大震災以前には公表していなかったのか。
九電 前述したとおり、玄海2・3号機は計画的に検査を行なうために運転を停止しています。その件については、プレス発表を行なっています。
――玄海原発の放射能漏れがレベル5とネット上にあるが、対するコメントを御社は行なっていないのか。
九電 「玄海原子力発電所の放射能漏れがレベル5である」とのネット上での書き込みの有無については承知していません。 そのため、当社としてもコメントは行なっていません。
<東日本大震災とやらせメール>
九電からの回答は迅速だったと思う。「ヨウ素濃度上昇」は事実だが、「事故でなく数値異常」という見解が見て取れる。
しかし、最近の「欧州ほどのストレステストは必要なのか」という政府要職者の発言は、日本の安全基準は欧州以下であることを認めたようなものであり、上記回答の民心への遡及(そきゅう)度は地に落ちている感がぬぐえない。(被爆国なのだから、ストレステストは、最も高い基準でもいいのではないか―)
東日本大震災とやらせメール事件で吹き飛んでしまった感のある『燃料棒の異常燃焼』は、そもそも大震災以前から一部の識者と市民が問題視していた事実であり、佐賀県知事も再稼働に対して慎重な姿勢をとっていた理由のひとつである。
【浜武 しんいち】
<プロフィール>
浜武 しんいち (はまたけ しんいち)
1965年10月23日、東京都大田区生まれ。74年、筑紫野市へ転居。84年、東福岡高校卒し、フリーデザイナーとなる。95年、久留米大学法学部を卒業後、政治家を志す。97年、筑紫野市議 落選(次点・626票)。99年、新党さきがけ福岡県支部筑紫野連絡所所長就任。2001年、筑紫野市議 初当選(1,200票)。03年、民主党福岡5区総支部常任幹事および同組織委員長に就任。05年、筑紫野市議 2選(1,581票)。07年2月、民主党福岡県連より除籍。同年4月、衆院福岡2区補選 落選(2,857票)。09年、筑紫野市議 3選(1,328票)。11年1月、筑紫野市長選挙に出馬、3,765票で落選する。
なお、政治活動のほか、理数専門塾(株式会社 FCS数学教室)の主宰、番組制作会社の主幹も務めている。
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