<総面積の91%を占める森林資源を活用>
梼原(ゆすはら)町は総面積の91%が森林という環境を活用し、化石燃料と比べてCO2排出量が削減される木質バイオマス循環プロジェクトを推進している。近年、同町では、輸入木材の影響で木材価格が低下して林業が衰退、木々が放置されるようになった。さらに、運搬コストが高い建築用資材の切れ端や間伐木材も放置され、山の荒廃が進んでいた。
現在、同町では、この放置木材をペレットとよばれる木片燃料に加工し、中学校寮の空調設備や家庭用ストーブの燃料として活用している。ペレットの資源である木材は潤沢にあり、燃やしたペレットの灰を山に還すことで循環エネルギーとしての価値がある。ペレット用ストーブの設置には4分の1の補助金、ペレットとなる森林の所有者には1haあたり10万円が交付される。そして、山の荒廃が改善されることは防災にもつながるのである。
<健全な梼原町財政>
高コストがいわれる自然エネルギーを導入した梼原町。その財政を健全化判断比率(関連リンク参照)で見てみると極めて健全な状態にあることがわかる。
まず、普通会計の赤字の程度を指標化した実質赤字比率では、2009年度で、国が定めた早期健全化基準▲15.0%に対して梼原町2.06%。全会計の赤字の程度を指標化した連結実質赤字比率では、早期健全化基準▲20.0%に対し梼原町13.8%。実質公債費比率は早期健全化基準25.0%に対し梼原町8.0%。将来負担比率では、早期健全化基準が▲350%に対して梼原町246.5%といずれも財政再建が必要とされる基準を上回っている。
この状況は、自然エネルギー導入の前後で大きな変化はなく、このことは地方自治体における脱原発社会の持続性についての可能性を示唆している。
<地域の財産を活かす>
このほかにも梼原町では、町営プールの地熱エネルギー利用、低炭素住宅の推進なども行なっている。現在の電力料金で考えた場合、コストパフォーマンスが低い自然エネルギーもあるが、将来的に電力料金が値上げされれば、相対的にコストパフォーマンスは向上する。自然エネルギーへの取り組みが拡大すれば、技術改善や設備価格の低下も見込まれるだろう。また、自然エネルギーはCO2排出量を減らすことができるとともに、自然環境が維持されれば限りなく利用することができる。
すべての地域が梼原町と同条件でできるとはいかないが、それぞれの地域で、今や財産とも言うべき自然の特性を活かしたエネルギーを利用することで「脱原発社会」は永続できるのではないだろうか。
【吉澤 英朗】
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▼関連リンク
・地方公共団体の財政の健全化(総務省HP)
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