22日に行なわれた、玄海原発3号機・耐震データの誤入力に関する記者発表は、九州電力(株)(本社:福岡市中央区、眞部利應社長)の原発に対する安全管理能力だけではなく、企業の社会責任に対する認識をも疑わせるものであった。
新たに発覚した耐震データ誤入力問題に先立ち、玄海原発の安全対策を説明するテレビ番組に、再稼動を賛成する内容のメールを送るよう"やらせ"の工作をしていた問題が発覚。眞部社長の進退問題に発展したが、その記者会見が開かれたのは7月6日。実は同日、原子力安全・保安院から、九電へ「誤入力の可能性」について示唆されていた。
九電は翌7日にその可能性があることを認識して調査を始め、誤入力の3カ所を特定。22日、原子力安全・保安院に報告した。なお、眞部社長へ最初に報告したのは11日だという。
問題なのはその公表の仕方だ。国会で物議を醸したことを受けて、全貌を解明する前に記者会見を行なった"やらせメール問題"とは違い、誤入力問題は全貌を解明した後の発表となっているが、本質はどちらも一緒。誤入力問題も、22日午前中に政府関係筋から情報がマスコミに伝わり、報道されたことを受けて、あわてて記者会見を開いた感が強い。同日正午前、NET-IBの問い合せに対し、記者会見を行なう時間・場所などについて九電側は「調整中」との返答であった。とても事前に予定していたとは思えないのである。
記者会見の内容も、原発の耐震安全性に関わる土木建築担当の副部長、次長、課長と、原子力管理担当の課長らが顔を並べ、いわゆる"経営責任者"は顔を見せなかった。他電力会社の耐震データの信憑性について疑問符が付くなど、日本全体に影響をおよぼす重大な問題であるにも関わらず、いわゆる社会的責任について発言できる人間がいないというありさまである。
『原発の安全性』という国家レベルで重要な問題に対し、不都合なことや不祥事について自ら公開しない企業体質を持つ九電に任せられるのだろうか。原発の賛否とは別にして、考えなければならない。
【山下 康太】
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