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コダマの核心

創出派vs守旧派の激突戦争時代(3)~決して安くない原発コスト
コダマの核心
2011年7月28日 11:25

<どこまでかかる?福島原発事故の被害補償>

国会議事堂 7月27日、西日本新聞朝刊の一面に「訪日観光解約すべて賠償」(原発事故、風評被害)という見出しが掲載されていた。その内容は「東京電力・福島第1原発事故をめぐり、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が検討している損害賠償の範囲の全体像を示す中間指針の原案が26日わかった。焦点となっている風評被害では、訪日外国人が5月末までにツアーや宿泊の予定を取り消した際に発生した国内すべての旅行業者や宿泊施設の減収分を賠償対象と認める方向」となっている。

 「そこまで賠償するのか」と、驚きの念を抱くとともに「これは大事バイ!」と狼狽した。簡単に説明してみよう。たとえば3月11日から5月末までに少なくとも50万人の外国人がキャンセルしたとする(実際の数字はこれを上回る)。旅行会社の売上をひとり15万円と設定すると、15万円×50万人=750億円の損失勘定となる。
次に宿泊施設の被害である。ひとりが平均3泊するとし、1泊単価が食事込みで1万円と設定する。1万×3泊×50万人=150億円となる。この場合、旅費と宿泊費を合わると900億円に達するのだ。

 それだけではない。観光業という業種にはその他たくさんの職種がぶら下がっている。この資産の場合でも最低100億円加算されるであろうから1,000億円をはるか上回る。加えること国内観光客においても福島、茨城、栃木3県でキャンセル分を補償するとなっている。こうなると観光産業だけでも損失補填の額はうなぎ登りとなる勘定だ。少なく想定しても上記の1,000億円×3倍=3,000億円にはなるのは間違いない。

 風評被害の賠償対象はさらに大規模だ。(1)農産物(福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉)、(2)茶葉(福島・茨城・栃木・群馬・神奈川県、静岡)、(3)畜産物(福島・茨城・栃木)、(4)水産物(福島・茨城・栃木・群馬・千葉)などが検討されている。旅行はしなくても済むが、食糧は人間が生きていくために必要である。風評被害への賠償額は1兆円におよぶであろう。

<実体被害の損失補填はひかえめにみて10兆円?>

 いままで述べてきたのは、原発事故・風評被害の損失の分野である。実際の原発事故による被害補填は莫大だ。直接的な原発解体、使用済み核燃料処分、土壌改良と筆記すればきりがない。10年、20年かかる。素人が判断しても1兆円をはるかに超えていくことがわかる。「各産業の企業への実害補償を考えれば、天文学的な数字になるのではないか」と想像するほどに震えが止まらなくなってくる。

 そして最も懸念する問題は、住民への経済的、精神的補償だ。福島原発周辺で生活していた人たちが生活制限、生活地点の移動を余儀なくされた。補償評価査定が困難である。3月11日から5月末までと区切ることができない。今年いっぱい、生活制限を受けるのか来年も受けるのかわからないのが苦しいところである。対象者が20万人としてザックリとひとり1,000万円としても2兆円になる。誰でもビックリ仰天するだろう。個別換算していくと実害補償が控えめに見て10兆円、最悪20兆円に迫ることが類推される。

 そうなると「原発コストが安い」という定説が嘘であったことが明確になる。仮に福島原発が40年稼働したとする。今回、ひかえめ説で10兆円、最悪20兆円となるならば1年間に2,500億円、または5,000億円のコスト負担をしていたことになる。そして近郊住民を地獄へ転落させ、日本国民全体に動揺させるパニックを惹起させたのだ。

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