<資産売却オンパレード>
前回、最低で10兆円、最大で20兆円の福島原発事故の賠償金額を想定した。まずは東電が自力で賠償資金を捻出しなければなるまい。「一体、東電はどこまで賠償金を負担できる能力があるのか」というシミュレーションが花盛りである。7月27日の日本経済新聞には「東電リストラ・大型データセンター売却で1,500億円を賠償資金に充当」と報じられている。東電は6,000億円規模の資産を売却して資金捻出する予定である。
報道された記事を引用すると、東京電力は公的支援の前提として資産リストラ策の骨格を政府に提示することになっている。東電6,000億円規模の資産売却の主な内訳は(1)保有株や事業(5,000億円以上確保)、KDDI株約8%出資(時価約2,000億円)、リクルート株約5%出資(約300億円相当)、アット東京(都内にデータセンターを保有、売却額1,500億円)、東電不動産(賃貸用オフィスビルなどの不動産)などである。これらから5,000億円調達する予定。
(2)不動産の売却で1,000億円を確保。東京電力総合グランド(東京・杉並)敷地面積約4万4,000平方メートル、時価百数十億円。杉並区と交渉。事業所など建物を証券化など1,000億円(引用終わり)。
不動産業界にとっては、一等地が売却されることで市況が活性化されて結構なことだ。6,000億円規模で賠償資金が賄えれば東電はハッピーである。一時は苦しくとも3~5年に間には取り返すことも可能かもしれない。しかし、そんなチャチな金額では済まない。また原発事業が封鎖されば電力事業のコストアップ負担が予想される。従業員の削減、給料のカットの鉈が振るわれる。政府も膨大な支援金を投入する以上、東電組織の大再編に乗りだすことは間違いない。
<最大調達限度5兆円でアウト>
下にある東電の連結決算をみて頂きたい。2011年3月期で1兆2,473億円の赤字を計上している。前期と比較して自己資本率が18.70%から10.50%へ8.2ポイント悪化させるほど凄まじい変化だ。12年3月期の赤字は1兆円程度で済むわけがない。借金も1兆5,000億円増加して9兆円に達している。12年3月には年商の2倍、10兆円に膨れるのは間違いない。企業の存亡ラインの瀬戸際にある。
こういう末期状況にあるとしても連結決算からうかがい知れることは「自己資本1兆5,581億円の含みは3倍前後ではないか」ということだ。となると自己負担限度額は5兆円前後となる。これはあくまでも机上の計算、いや空論になるかもしれない。東電は卑しくも上場企業である。株は証券取引所で売買されている。株の暴落は始まっているが、取引不成立になるような最終幕もないではない。
福島原発賠償額の最低見積りを10兆円として、東電自己負担限度額5兆円とすると国は5兆円を補填しなければならない計算となる。一企業のために5兆円も救済金を捻出しなければならいのだ。これならばグタグタせずに東電を解体させて国有化の道へ踏みだした方が賢明である。時間差はあろうが、この道へ流れは固まる。ただし、福島原発事故の責任追及を不問にしたら駄目だ!! 福島原発事故を巡って「守旧派代表格・東電」は消滅の運命に翻弄されるのである。玄海町民!! 九電だって安泰ではないよ。
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