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東日本大震災

最優秀賞受賞・佐藤俊郎氏『東日本復興計画私案』(3)~自然に寄り添う「ヒト」
東日本大震災
2011年8月 4日 14:10

 生死を分た瞬間の生存者は、例外なく「いのち」を持ち帰った喜びを語る。ならば、インフラでもなく、経済の再生でもなく、まずは「ヒト」の情景を描いてみる。

<情景1・2021年 犠牲者を地球へ還す>

 震災から10年を経て、共同樹木霊園の木々はたくましく成長し、桜の季節には、多くの人々が故人を偲び、霊園を訪れている。復興へのまなざしは、ある意味、亡くなった方々への気持ちの離別から始まった。人々は、現実に生きなければならない。亡くなった方々をどのように哀悼をもって表現し、葬るのか、これも大きな復興の課題であった。

 震災復興のシンボルとして多くの「植樹」が行なわれたが、その植樹に亡くなった方の思いを込める樹木霊園が提案され、被災地の復興計画に組み込まれた。樹木霊園は、生前に故人が愛した樹木に亡くなった方のプレートが添えられ、自然環境を修景し、鎮守の森となり、防風林として、いわば死後も、被災者とともに復興を支えて来た。亡くなった方々が自然へ帰る、その素直な新しい表現のひとつであった。

 従来の霊園は、多くが外国からの輸入墓石であり、その霊園も土地を造成し、いわば死者のための団地を作る結果となり、少子化のなかで墓石の維持管理も問題とされてきた。犠牲者への思いは決して色褪せることはないが、今を生きる人々には厳しすぎる現実がある。そのなかで、死者も生者とともに地域の復活に伴走する、そんな考え方から樹木霊園は生まれたのである。

<2011年 創造と破壊の計画>

うず高く堆積した瓦礫... 「創造」には必ず「破壊(廃棄)」が含まれている。うず高く堆積した瓦礫、屋上に打上げられた漁船。その異様さは、まさに一瞬にして、朽ち果てる経過を「破壊」と成した自然の驚異である。しかし、これとて、究極、「建築はゴミ」だ、を証明したにすぎない。建設や復興には「創造的」な響きがあるが、今は、創造性に包含される破壊の結果としての「廃棄」から構築する復興計画が必要ではないだろうか。

 世界的な都市計画家、Kevin Lynch(ケビン・リンチ)の遺作が「廃棄の文化誌:Wasting Away」であったことは、創造性が廃棄や破壊と表裏一体であり、むしろ廃棄の視点から創造性を問うことを要求している。また、開発や成長を促進すると同じように場所の衰退や優雅な「死」を手助けするのも計画家の重要な役割であるとも述べている。原発は、その使用済み燃料という「廃棄物」の処理が確立されていない、死を看取れない、いわば未完の技術であった。

 今回、「モノ」として破棄される瓦礫以外に、放射能や海水に浸食された多くの土地が一旦であれ、廃棄せざるをえないだろうが、リンチの指摘する「だれにとっての廃棄か?」という問いは極めて重要である。逆説的な視点を述べれば、「田んぼのめぐみ(宇根豊)」の視点で、「生産性」ではなく、生物の多様性を保持し、豊かな環境を維持してきたのが「田んぼ」であるとするならば、今一度、廃棄される田畑への「関心と権利を緩やかに断念(リンチ)」し、国が半永久的な借地権を設定し、リザーブ用地として生態学的放棄を行なう。経済作物ではなく、景観作物や環境作物という考えは、決して損失ではなく、未来の再生への原資であるはずだ。

 案外、自然はたくましく、人間以上に創造的である。その自然に寄り添う未来があるはずだ。

(つづく)

【佐藤 俊郎】

※一部表記の変更を除き、原文のまま。

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<プロフィール>
佐藤 俊郎 氏佐藤 俊郎 (さとう としろう)
 1953年、熊本県水俣市生まれ。九州芸術工科大学、UCLA(カリフォルニア大学)修士課程修了。アメリカで12年の建築・都市計画の実務を経て、92年に帰国。「株式会社環境デザイン機構」を設立し、現在に至る。「NPO FUKUOKAデザインリーグ」理事、「福岡デザイン専門学校」理事なども務める。2010年2月の糸島市長選挙に出馬し善戦するも、7,233票差で落選。11年7月、朝日新聞社「ニッポン前へ委員会」が募集した提言論文で応募作1,745のなかから、最優秀賞に選ばれた。

「佐藤俊郎氏・最優秀作品賞受賞の祝賀会を開催します!」

 8月12日(金)午後6時30分から、ホテルオークラ福岡(福岡市博多区)で、佐藤俊郎氏の功績を讃える祝賀会を開催します。当日は、佐藤氏が受賞論文に関する講演を行なうほか、カルテットによる演奏、一流シェフ自慢の料理などをご用意しております。参加費は、ひとり1万円。先着申し込みとなっていますので、佐藤氏と親睦を深めたい方、最優秀作品賞に選ばれた論文の内容に深く触れたい方は、この機会に!

申し込み・お問い合せは、弊社(TEL:092-262-3388、担当:山下康、楢崎)まで。

■佐藤俊郎氏 朝日新聞社「ニッポン前へ委員会」提言論文 最優秀賞 受賞 祝賀会
<日 時>
8月12日(金) 18:30~(受付18:00~)

<場 所>
ホテルオークラ福岡3階 メイフェア
福岡市博多区下川端3-2
TEL:092-262-1111

<会 費>
1万円

<申し込み・お問い合せ>
(株)データ・マックス(担当:山下康、楢崎)
TEL:092-262-3388
FAX:092-262-3389

申し込み用紙(FAX)はコチラ(PDF)


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