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東日本大震災

最優秀賞受賞・佐藤俊郎氏『東日本復興計画私案』(6・終)~新しい主役
東日本大震災
2011年8月 8日 13:00

<情景4・2021年 新しい主役は誰か>

 彼女の住む、R市は、津波で市街地が壊滅的な打撃を受けた。市役所も機能を失い、仮設庁舎で業務が再開された。機能が麻痺した行政を支えたのが、医療、福祉の分野で活動していた市民団体であり、ボランティアを受け入れた組織でもある。

 震災復興から2年目、行政業務を肩代わりする形で、社会的企業が立ち上がり、公的仕事のワークシェアーが始まった。震災後、犠牲者、および、遠隔地へ避難し、そのまま根付いた家族などで、人口は震災前の6割にとどまり、税収の激減と構造的な少子高齢化で、市の財政は極めて厳しい状況にあった。この過程で、市議会のあり方が議論され、議員日当制や、夜間、週末の議会開催などが実施された。同時に、行政が担う義務的業務の多くが社会的企業に移管され、行政の中枢は、まちづくりのプロデユーサーとして機能し、市民とNPO団体などがパートナーとなる「新しい共同体」のもとで、様々な計画が創られ、市民の手で実施されていった。

 結果、小さくなった自治体ではあるが、地域主権の実が創造的自治体を生み出し、人材を含め、様々な地域資源、多様な才能を行政機能のなかに取り込み、首都圏からの有能な人材の受け皿ともなったのである。

<2011年 復興計画は可能か>

 地方自治体は、今まで、本当に地域の問題を「解決」してきたのか。計画の策定は外部コンサルタントに依存し、交付金や補助金を事業として流し、創造性など無縁の組織をひたすら堅持してきた、それが実態ではなかったか。

 復興計画を作成する行為、そのものの妥当性も問われなければならない。
 福島の原発復旧作業で、耳と目を疑った。現代技術の粋を集めたはずの原発の復旧活動が、まさに「竹槍で立ち向かう」作業が行なわれる異常さと破綻、そして全体を俯瞰(大本営)し、指令を出し、命を掛けて現場の最前線で復旧活動を行なう作業員へのツリーのような指揮命令系統の破綻。

 1970年の大阪万博を終焉のシンボルとして、総合計画やマスタープランといった手法の破綻は震災前から、一致した認識である。ピラミッド構造を否定し、セミ・ラチスの構造を提唱した建築家Christopher Alexander(クリストファー・アレグザンダー)の考えは、ネットワークといった思考のなかで、情報の共有、フラット化が進み、リダンダンシーという視点からも、多様な小さな単位での自律と共存が、自治体の多様性と安定をもたらす、という選択肢としてすでに用意されている。

「ガイア」の視点に立つならば... 電力の供給にしても、提唱されているスマートグリッドは、まさにセミ・ラチスであり、破綻の規模を最小限に抑える事ができる。震災復興で、自治体の再編は不可避だと思われるが、その上位に道州制の議論が乗るのではなく、国家と道州と、自治体が、ほぼ同列に並び、役割、機能でセミ・ラチスの構造を創る、その状況で計画が進行すべきである。まずは、再編が不可避な自治体から手を付けて、特区で権限と財源を移譲した「自治体デザイン」が必要である。

 この復興計画は、まず、最終的に自分の人生の問題として責任を負える当事者で進めるべきだ。部分最適解の集積が必ずしも正しい方向性を示すとは限らない。しかし、人間の存在が環境問題の唯一の汚染源であるとする「ガイア」の視点に立つならば、目に見えない微生物すら、生物的部分最適解を維持するために地上に存在する。

 借り物の地球での復興計画の策定と実施は、地域の実態に沿って、地方の創造性に期待し任せるべきである。「中心から外れた地域」を再生し、次の社会モデルの中心とする、あるいは「計画を否定し、超える計画」という非合理も、またヒトでしか創れない。

 その上で、私のような遠隔の一市民も世代に責任を持つ当事者として、必ず役に立てると信じている。

(了)

【佐藤 俊郎】

※一部表記の変更を除き、原文のまま。

≪(5) |      

<プロフィール>
佐藤 俊郎 氏佐藤 俊郎 (さとう としろう)
 1953年、熊本県水俣市生まれ。九州芸術工科大学、UCLA(カリフォルニア大学)修士課程修了。アメリカで12年の建築・都市計画の実務を経て、92年に帰国。「株式会社環境デザイン機構」を設立し、現在に至る。「NPO FUKUOKAデザインリーグ」理事、「福岡デザイン専門学校」理事なども務める。2010年2月の糸島市長選挙に出馬し善戦するも、7,233票差で落選。11年7月、朝日新聞社「ニッポン前へ委員会」が募集した提言論文で応募作1,745のなかから、最優秀賞に選ばれた。

「佐藤俊郎氏・最優秀作品賞受賞の祝賀会を開催します!」

 8月12日(金)午後6時30分から、ホテルオークラ福岡(福岡市博多区)で、佐藤俊郎氏の功績を讃える祝賀会を開催します。当日は、佐藤氏が受賞論文に関する講演を行なうほか、カルテットによる演奏、一流シェフ自慢の料理などをご用意しております。参加費は、ひとり1万円。先着申し込みとなっていますので、佐藤氏と親睦を深めたい方、最優秀作品賞に選ばれた論文の内容に深く触れたい方は、この機会に!

申し込み・お問い合せは、弊社(TEL:092-262-3388、担当:山下康、楢崎)まで。

■佐藤俊郎氏 朝日新聞社「ニッポン前へ委員会」提言論文 最優秀賞 受賞 祝賀会
<日 時>
8月12日(金) 18:30~(受付18:00~)

<場 所>
ホテルオークラ福岡3階 メイフェア
福岡市博多区下川端3-2
TEL:092-262-1111

<会 費>
1万円

<申し込み・お問い合せ>
(株)データ・マックス(担当:山下康、楢崎)
TEL:092-262-3388
FAX:092-262-3389

申し込み用紙(FAX)はコチラ(PDF)


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