民事再生法の適用を申請した(株)安愚楽牧場の負債総額が4,330億8300万円におよぶことが判明した。負債総額は、ほとんどが和牛オーナー7万3,356人からの牛の買戻し費用で占められており、その額は4,207億円に上った。負債額は、2月に倒産したバイオ関連の林原(岡山市)の1,322億円を上回り、現時点で今年(2011年)最大の倒産となる。
ただ、負債総額には、支払が滞っていたオーナーへの配当金などは含まれておらず、実質の負債総額は4,330億円を上回り、消費者被害としては戦後最大の負債額となる可能性も高い。
また、申立書によると、牧場や食品加工事業、子会社が運営するホテルなどを売却し、実質的な会社の清算を目指す方針だという。
しかし、牛の価値が下がっている現在、牧場などの資産を売却しても、たかが知れている。やはり頼みは国による損害賠償だ。細野原発事故担当相は、安愚楽牧場が原発事故の賠償の対象となり得るという認識を示したが、「和牛委託オーナー制度」は投資ビジネスであり、リスクが付きものの金融商品にどれだけ税金が投入されるのか、疑問の声もある。
仮に口蹄疫問題で農林水産省が補償した額から国の補償額を計算すると、口蹄疫問題で処分された1万5,000頭の牛は、1頭あたり58万円。オーナー契約の牛の飼育頭数は10万6,343頭で、この頭数に58万円をかけると約617億円。牧場などの資産売却が仮に100億円だとして、資産の合計は約717億円となり、ここからオーナー7万3,356人を割ると、一人あたりの返済額は約100万円となる。
上記の計算からすると、既報の通り、返済額が元本の1割未満という数字が現実味を帯びてくる。17日(神戸市)、19 日(東京都)に開催される債権者説明会で、どのうような説明が行なわれるのか、注目されている。
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